【特筆に値する5台の国産4WD】前後トルク配分に込められた開発者の熱き想い!

公開 : 2025.01.24 12:05

日産スカイラインGT-R(BNR32/1989~1994年)

1989年にデビューした3代目スカイラインGT-Rは、専用設計のRB26DETT型2568ccの直6DOHCツインターボエンジンを搭載した4WD車だ。

四駆のシステムは『アテーサE-TS』と呼ばれ、基本的には後輪を常時駆動。それを前輪にトランスファーで分岐し、湿式多板クラッチの押しつけ力を油圧で増減させて、トルクを0:100~50:50の範囲で配分する。

日産スカイラインGT-R(BNR32/1989~1994年)
日産スカイラインGT-R(BNR32/1989~1994年)    日産自動車

このシステムには前後4輪の車輪速度センサーと横Gを検知するGセンサーが備えられ、これらセンサーからの入力信号を受けてコントローラーが油圧多板クラッチの圧着力を変化させ、前輪へのトルク配分を決める。

さらにABSとの総合制御も実現している。実際に試乗してみると、ドライ路面のサーキットのコーナリングでは大胆なドリフト走行を可能にし、ハイパワーFR車に近い印象で走れた。しかし、筆者のドライビングレベルではときに激しいアンダーステアに陥ることもあり、一筋縄ではいかないことを思い知らされた。

また、タイヤやブレーキパッドの摩耗に対して、敏感な傾向があるようにも思えた。4代目ではこのアンダーステアが気にならなくなっており、進化のほどを感じるが、時代背景を鑑みて3代目スカイラインGT-Rを選んだ。

三菱ランサーエボリューションX(2007~2015年)

思えば筆者がかつて乗っていたランサーエボリューション(1992年)のスポーツドライビングは、アンダーステアとの格闘だった。これでは直線番長だと、自分でタイヤサイズと銘柄を換えたりしたが解決には至らず、1994年にランサーエボリューションII(1994年)が出て、試乗もせずに買い替えた。足まわりの刷新やリア機械式LSDの採用などの改良によって、よく曲がるクルマに仕立てられているという前評判を聞いたからだ。

事実エボIIは、高速コーナーでオーバーステアに持って行くことも可能なファントゥドライブなクルマになっていた。またランサーエボリューションIV(1996年)では、GSRのリアデファレンシャルにアクティブ・ヨー・コントロール(AYC)が採用されよく曲がる印象をさらに高めたが、これはなぜか競技車ベースのRSには採用されていない代物であった。

三菱ランサーエボリューションX(2007~2015年)
三菱ランサーエボリューションX(2007~2015年)    三菱自動車

結論は新開発の車両運動統合制御システム『S-AWC』を搭載したランサーエボリューションXこそ、曲がることに対してもっとも貪欲なクルマであり、全開で走り回ったテストコースでは作り手(エンジニア)のやりきった感を共有できた、まさに集大成である。アクセルを踏めば踏むだけ速く、俊敏にコーナーをクリアして行く感覚は昨日のことのように思い出される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    木原寛明

    Hiroaki Kihara

    1965年生まれ。玉川大学では体育会ノリの自動車工学研究部に所属し、まだ未舗装だった峠道を走りまくった。最初の愛車(本当は父のもの)は2代目プレリュード(5MT)。次がフルチューンのランサーEXターボ。卒業してレースの世界へと足を踏み入れたものの、フォーミュラまで乗って都合3年で挫折。26歳で自動車雑誌の編集部の門を叩き、紙時代の『AUTOCAR JAPAN』を経て、気が付けばこの業界に30年以上。そろそろオーバーホールが必要なお年頃ですが頑張ります!
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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