【特筆に値する5台の国産4WD】前後トルク配分に込められた開発者の熱き想い!

公開 : 2025.01.24 12:05

トヨタGRヤリスRZ(2020年〜)

トヨタは1999年にWRCから撤退するも、2017年から再び参戦。GRヤリスは同シリーズに勝つことを目的に作られたホモロケーションモデルである。

大きく膨らんだリアフェンダーやカーボン製ルーフを見ると、速いクルマ特有の気配が濃厚。察するにこのクルマの駆動方式はFFではなく、後輪駆動か4WDに見える。もちろんこの記事に出している以上、4WDであるのだが、運転してみると街乗りでの違和感がないのにスポーツドライビングが極めて愉しく、4WD特有のハンドリングの癖のようなものがないことに驚かされる。

トヨタGRヤリスRZ(2020年〜)
トヨタGRヤリスRZ(2020年〜)    トヨタ自動車

加速も鋭い。エンジンはG16E-GTS型1.6L直列3気筒DOHCターボで、最高出力272ps、最大トルク37.7kgmを絞り出し、0-100km/h加速5.5秒以下、最高速度230km/hを実現する。

4WDシステムはセンターデファレンシャルに電子制御式カップリングを用いた新開発のスポーツ四輪駆動システムで、トルクを電子制御多板クラッチセンターデファレンシャルによって前後の駆動輪に配分する。配分は通常で60:40、スポーツモードで30:70、トラックモードで50:50となる。

トランスミッションは6速MTに加えて、2024年のマイナーチェンジでAT制御ソフトウエアをスポーツ走行用に最適化したという、8速GR-DAT(GAZOO レーシング・ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)も選べるようになった。ちなみに、どちらもサイドブレーキは手引き式が組み合わされている。

トヨタ・ランドクルーザー(300系/2021年〜)

新型ランドクルーザーには縁があり、街乗りから首都高、高速道路、ワインディングロード、ハンドリング路、過酷なオフロードコースと、さまざまなシーンでプロドライバーや開発ドライバーの横に同乗し、自分でも運転することができた。

結論から先に述べると、このクルマは『四駆システムがどうのこうの』と書くのが野暮に思えるくらい素晴らしく、完璧だった。「あんなに大きいクルマは必要ないじゃないか」と仰る方もいるだろう。確かに僕も試乗するまでは、ランクルじゃなきゃ駄目な人の気持ちはわからなかった。

トヨタ・ランドクルーザー(300系/2021年〜)
トヨタ・ランドクルーザー(300系/2021年〜)    トヨタ自動車

ちなみに先代のランクル(200系/2007〜2021年)も運転したことがあるが、走りの面で新型と比べれば古くさく感じる。重々しく、鈍重なのだ。一方、クルマを骨格から変えて、基本性能と商品力を大幅に向上させるというTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に基づくGA-Fプラットフォームを採用した新型は、従来比で約200kg軽量化されており、低重心化や前後重量配分も改善されている。

パワートレインも大きく進化を遂げている。特にガソリンエンジン車は4.6L のV8自然吸気から3.5LのV6ツインターボに刷新されており、賢い10速ATとの組み合わせでどんな場面でも頼もしく、かつ気持ちのいいドライブフィールを実現。首都高やハンドリングコースでもノーズの重さはさほど感じさせない。

繰り返すが、これはやはり四駆システムどうこうの話ではない。人間が歩けないような泥濘の荒地を走り抜け、岩をも乗り越え、ワインディングロードでは機敏に走る。当初、強靱なサバイバル性能を持ったクロカンは選択肢にないと思っていた筆者だが、熟考の末、ランドクルーザー300を『特筆に値する国産4WD』の最後に紹介することに決めた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    木原寛明

    Hiroaki Kihara

    1965年生まれ。玉川大学では体育会ノリの自動車工学研究部に所属し、まだ未舗装だった峠道を走りまくった。最初の愛車(本当は父のもの)は2代目プレリュード(5MT)。次がフルチューンのランサーEXターボ。卒業してレースの世界へと足を踏み入れたものの、フォーミュラまで乗って都合3年で挫折。26歳で自動車雑誌の編集部の門を叩き、紙時代の『AUTOCAR JAPAN』を経て、気が付けばこの業界に30年以上。そろそろオーバーホールが必要なお年頃ですが頑張ります!
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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