フィアット・グランデ・パンダ・エレクトリックへ試乗 初代の面影が滲む意欲作 HVも同時リリース

公開 : 2025.02.06 19:05

ポップな雰囲気で実用的な広々インテリア

インテリアは、ボディと同じくらいポップな雰囲気。シートには、PANDAのアルファベットがエンボスで散りばめられている。ドアパネルには、フィアットのロゴ。その一部は、ダンボールのリサイクル材で作られているとか。

ダッシュボードは、両端が丸くなった長方形。これは、イタリア・トリノにある旧リンゴット工場の屋上にあった、テストコースのカタチを模したもの。タッチモニターのパネルも同じ形で、その右側に初代パンダのアイコンがあしらわれる。

フィアット・グランデ・パンダ・エレクトリック・レッド(欧州仕様)
フィアット・グランデ・パンダ・エレクトリック・レッド(欧州仕様)

素材は比較的一般的なものだが、工夫で高級感が生み出されている。ラ・プリマ・グレードでは、化粧トリムへ竹で作られた繊維が用いられる。もう少しシンプルにすれば、さらに価格を下げられたかもしれないが、筆者は丁度良いバランスに思えた。

ベースグレードのレッドでも、装備に不満なし。ラ・プリマに備わる、シートヒーターとバックカメラは有用だとしても。

タッチモニターは10.25インチ。システムはシンプルで、グラフィックはクリアで、複雑な機能もないから扱いやすい。レッド・グレードでは、エアコンの操作パネルへ実際に回せるノブが残る。

車内空間は広々。後席側でも、大人が快適に過ごせるはず。ダッシュボード上部には収納トレイがあり、グローブボックスもある。助手席の頭上には、3Lぶんの収納も。荷室は361Lと、このクラスとしては広い。

シートの快適性は今ひとつ。かなり硬めで、長距離ドライブでは疲れるかもしれない。

有能な動力性能 予想しやすい操縦性

公道へ出てみると、112psで充分活発。高速道路の速度域にも、まったく気張らず対応できる。このクラスのバッテリーEVとしては、かなり有能な動力性能といっていい。シンプルなクルマ作りを反映してか、ドライブモードはない。

回生ブレーキの効きは若干弱め。ブレーキペダルを踏む回数は多めに思えたが、速度調整はしやすく感じた。制限速度警告機能は、試乗車はやや誤作動が多く、警告音も耳障りといえた。

フィアット・グランデ・パンダ・エレクトリック・レッド(欧州仕様)
フィアット・グランデ・パンダ・エレクトリック・レッド(欧州仕様)

操縦性は、グランデ・パンダで最も褒める部分が少ないかもしれないが、充分に納得できるもの。小さな電動ハッチバックとして、不満はないだろう。運転へ惹き込まれるほどではないものの、直感的に扱え、頼もしい感じすらある。

ステアリングの反応は、予測しやすく良好。乗り心地は、高めのサイドウォールを持つタイヤも手伝って、しなやか。敷かれてからだいぶ時間が経過した、トリノのアスファルトにも見事に順応し、能力を引き出すことを許していた。

試乗車が履いていたのは、16インチのスチールホイール。アルミホイールを選ぶと、17インチへアップする。

プラットフォームを共有するe-C3と比較すると、走りの印象は意外なほど異なる。運転が楽しいのは、e-C3の方だろう。グランデ・パンダは、モデル名から想像する通り自然で親しみやすい。

航続距離は、カタログ値で320km。1月のトリノを様々な条件で試した今回は、297kmを走ることができた。e-C3と同等といえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    役職:編集者
    自動車業界で10年以上の経験を持つ。欧州COTYの審査員でもある。AUTOCARでは2009年以来、さまざまな役職を歴任。2017年より現職の編集者を務め、印刷版、オンライン版、SNS、動画、ポッドキャストなど、全コンテンツを統括している。業界の経営幹部たちには定期的にインタビューを行い、彼らのストーリーを伝えるとともに、その責任を問うている。これまで運転した中で最高のクルマは、フェラーリ488ピスタ。また、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIにも愛着がある。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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