フェラーリ初のEV、10月9日発表へ 年内に新型6車種を投入も

公開 : 2025.02.06 18:05  更新 : 2025.02.06 18:05

フェラーリは10月9日に同社初のEVモデルを発表する。また、6車種の新型車を2025年内に投入するという。「量よりも質」を重視した戦略で、大幅な増収増益を達成した昨年に続き、さらなる飛躍を目指す。

「量よりも質」 昨年は大幅な増収増益

フェラーリは10月9日、同社初のEVを発表する予定である。

2024年の決算発表の中で、CEOのベネデット・ヴィーニャ氏は「10月9日のキャピタル・マーケット・デーで、我々の未来についてさらに詳しく発表する」と述べた。

生産終了したSF90ストラダーレの後を継ぐ新モデルも今年登場する見込みだ。
生産終了したSF90ストラダーレの後を継ぐ新モデルも今年登場する見込みだ。

同氏は詳細について明言を避けたが、「ユニークで革新的な方法」で発表されるという。

フェラーリが新型ハイパーカーのF80を公開してから1年が経つ。F80は2025年秋頃に納車が開始される予定であり、フェラーリにとって特に忙しい時期となるはずだ。今年はローマとSF90ストラダーレの後継車も発表すると予想されているが、それらがキャピタル・マーケット・デーでの発表となるかどうかは不明だ。

全体として、ヴィーニャ氏は2025年に6車種の新型車を投入すると述べた。大幅な増収増益となった2024年を経て、今年は「さらなる力強い成長」を期待しているという。

フェラーリの2024年の出荷台数は前年比0.7%増の1万3752台にとどまったが、売上高は12%増の67億ユーロ(約1兆円)を記録し、純利益は21%増の15億3000万ユーロ(約2420億円)となった。

ヴィーニャ氏は、この増収増益は「量よりも質」によるものだとし、「優れた製品構成とパーソナライゼーションへの需要の高まり」の影響を強調した。

2024年には、ポルトフィーノM、SF90ストラダーレ、812、ローマの生産が段階的に終了し、代わりにプロサングエ、ローマ・スパイダー、296 GTS、SF90 XX、12チリンドリの生産を拡大した。296とSF90のハイブリッドモデルラインは、総出荷台数の51%を占めた。

フェラーリによると、超限定モデルのデイトナSP3と499Pモディフィカータの投入により、製品構成が「より充実」したという。顧客がこれまで以上に広範囲にクルマをカスタマイズするようになったことも好調の理由の1つだ。

初EVはプロサングエのような「SUV」に?

ヴィーニャ氏は最近、AUTOCARの取材に対し、フェラーリ初のEVはすでに数千kmのロードテストを完了しており、顧客が「存分に楽しめる」ように「適切な方法」で製造すると約束した。

EVが一体どのようなモデルになるかは、まだ詳細が伏せられている。最近欧州では、マセラティレヴァンテのボディを改造したテスト用車両と思われるものが目撃されている。とはいえ、デザインがレヴァンテと似たものになるかどうかはまだわからない。

フェラーリはEVモデルの仕様や販売予測について言及を避けている。(写真はプロサングエ)
フェラーリはEVモデルの仕様や販売予測について言及を避けている。(写真はプロサングエ)

注目すべきは、プロサングエの開発時にマセラティのSUVをベースとしたプロトタイプを製作し、テスト走行を行っていたことだ。両車は根本的に異なるモデルであるが、最低地上高が高いことや後部座席を備えていることなど、類似点はいくつかあった。

ヴィーニャ氏は新型EVについて、フェラーリの既存顧客と新規顧客の両方にアピールできるだろうと述べた。

「実際にはパターンというものはない。人々がフェラーリを買うのは、フェラーリを買えばとても楽しいからだ。A、B、C、D、あるいは単一の要素が理由でフェラーリを買うのではない。さまざまな要素が組み合わさっているのだ。当社は適切な方法でEVを製造するつもりだ」

「すでに数千kmを走行したプロトタイプがあること、そして当社には非常に有能な顧客、つまりテストドライバーがいることを考えてみてほしい。当社のクルマの最初の顧客はテストドライバーだ。彼らは多くのクルマを運転しており、容易に比較を行うことができる。そのため、当社にとってはこの点が重要な指標となる」

ロイター通信の報道によると、新型EVの価格は50万ドル(約7600万円)からで、2番目のEVモデルもすでに開発中であるとされている。ヴィーニャ氏はこれらの報道を「驚き」と表現し、「クルマの価格を決定するのは、発売の1か月前だ」として内容を認めなかった。

フェラーリのEVは、マラネロ本社に最近オープンしたばかりの新しいeビルディング(e-building)で生産される予定だ。この施設には最新鋭のラインが設置されており、プロサングエとSF90で稼働を開始する可能性が高い。EVの生産は2026年に始まる。

この新しい生産ラインは、現在有する2つのラインのいずれかに置き換わるものではないが、同社は生産能力の拡大についてコメントを控えている。

ヴィーニャ氏は、フェラーリは将来的に純エンジン、ハイブリッド車、EVの各モデルを展開していくが、それらの販売台数については社の目標ではなく、顧客の需要によって決まるとした。

「パワートレイン別に販売数を予測することは、顧客を軽視する傲慢な行為であり、顧客に対する敬意の欠如である。我々が(各モデルの)販売比率について話すことは決してない」

「顧客が何を望んでいるか、どうやって知ることができるだろうか? コンピューターがクルマを選ぶわけではない。感情を持つ人間が選ぶのだ」

フェラーリは将来的に、自社EV向けの高電圧バッテリー、電気モーター、アクスルなどのパワートレインのすべてをeビルディングで生産する計画だ。

重要部品の生産を内製化することで、ライバルと差別化を図り、すべてのモデルのサービスを継続的に提供していく狙いだ。

それまでフェラーリは、バッテリーセルを複数のサプライヤーから購入する。ヴィーニャ氏は、どの企業から購入するかについては一切情報を明かさなかったが、バッテリー技術に関するヒントを出した。

「市場では、LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーを求める声が聞かれる。しかし、LFPバッテリーはフェラーリには向かない。当社には適していないのだ」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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