往年のGT的流暢さ マセラティ・グラントゥーリズモ・フォルゴーレへ試乗 ウェットで0-100km/h 2.9秒

公開 : 2025.02.24 19:05

華やかなインテリアに低い着座位置

美しいスタイリングと同様に、インテリアもグラントゥーリズモ・トロフェオと違わない。全体的に、華やかさを感じる仕上がりにある。試乗車はツートーンでコーディネートされ、特別感も高かった。

フロア部分に駆動用バッテリーがないぶん、着座位置は低い。ホイールベースが長いため、後席は実用に耐える。10代前半の子どもなら、長距離ドライブにも対応するだろう。荷室容量は、270Lと限定的だが。

マセラティ・グラントゥーリズモ・フォルゴーレ(英国仕様)
マセラティ・グラントゥーリズモ・フォルゴーレ(英国仕様)

ステアリングホイールの裏には、回生ブレーキの強さを選べるアルミニウム製パドルが備わる。最大400kWで発電でき、減速力は0.65Gに達するという。

ダッシュボード中央には、12.3インチのインフォテインメント用タッチモニター。ドライバーの正面には、12.2インチのメーター用モニターが据えられる。

インフォテインメント・システムの反応は、若干遅れ気味。メニュー構造は、覚えるまでに少し時間が必要かもしれない。アップル・カープレイとアンドロイド・オートには、シームレスに対応していた。

3基の駆動用モーターが発揮するパワーとトルクは、マセラティ独自のビークル・ドメイン・コントロール・モジュールと呼ばれるシステムによって制御される。また、マックスレンジ、GT、スポーツ、コルサという、ドライブモードでも解放量は変化する。

761psと137.4kg-mのすべてを利用できるのは、スポーツとコルサの2モード時のみ。デフォルトのGTモード時は、80%に制限される。

息が詰まるほど速い0-100km/h加速2.9秒

ご想像のとおり、コルサ・モードのフォルゴーレは息が詰まるほど速い。テストコースは路面が湿っていたが、四輪駆動を活かしスターティングを見事に決めてみせた。スタビリティとトラクションのコントロールは、かなり有能といえる。

優れないコンディションでも、0-100km/h加速は2.9秒。0-161km/h加速は6.4秒で、14.6秒後に241km/hへ達した。比較すると、グラントゥーリズモ・トロフェオはそれぞれ3.6秒、8.0秒、18.7秒となる。

マセラティ・グラントゥーリズモ・フォルゴーレ(英国仕様)
マセラティ・グラントゥーリズモ・フォルゴーレ(英国仕様)

速いだけでなく、普段使いとの親和性も高い。コルサ・モードでも、パワー制御は洗練されている。加速力は確かに鋭いが、予想した通りの速度上昇を引き出せる。

濡れた路面で、敢えてアクセルペダルを蹴飛ばすと、リアタイヤは悶えるものの、その挙動は把握しやすい。フロントアクスルが、丁度いいタイミングで前方へボディを引っ張り、滑らかに姿勢を整えてくれる。

僅かにペダルの感触は鈍いものの、ブレーキも、2.4tの車重を考えれば充分に強力。回生ブレーキと摩擦ブレーキの切り替わりも、ほぼシームレスといえる。回生ブレーキの強さをパドルで選べることが、運転体験の魅力度を高めている。

乗り心地は、長いうねりがある路面では良好だが、細かな凹凸が続く場面では揺れを抑えきれない様子。110km/hでの走行時の、車内のノイズ量は71dBA。タイカン・ターボSは、66dBAだった。

航続距離は、現実的には400km程度。グランドツアラーとしては、やや物足りない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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