【992.2型はジャーナリスト泣かせ?】最新のポルシェ911カレラに試乗!ナローにも通じるその真価

公開 : 2025.03.05 11:25

8代目ポルシェ911が後期型、いわゆる992.2型になりました。ハイブリッドモデルが話題ですが、今回はベーシックな911カレラに試乗します。果たして992型からどんな進化を見せたのでしょう。吉田拓生のレポートです。

変化は最小限、しかもシンプル方向に

8代目ポルシェ911の後期型、つまり992.2型のベーシックモデルであるカレラに試乗することができた。

今回の変更点ですぐわかるポイントは、フロントバンパーの左右に組み込まれたインテーク形状があげられる。以前はここにドライビングライトが備わっていたのだが、それが排され丸目の中に吸収されている。インテーク内には、横方向のルーバーだけがすっきりと残されている。

8代目ポルシェ911の後期型、992.2型のベーシックモデルであるカレラに試乗。
8代目ポルシェ911の後期型、992.2型のベーシックモデルであるカレラに試乗。    田中秀宣

代替わりの度に機構的に複雑になっていくことが多いのは、ポルシェに限った話ではない。だが一方で見た目がハイテクの恩恵によってシンプルになるのは、歓迎すべきではないだろうか? しかもそれが伝統的な911カレラの表情だというのは「ナローに近づいた!」とまでは言わないが、オリジナルに寄せた感じがあって好印象といえる。

室内ではついに5連メーターが完全にデジタルパネルに変わった点が目新しい。それを残念がる向きもあるが、個人的にはかつてダッシュパネル自体がモノコックの一部だった事実こそが軽量かつ高剛性なポルシェ911の美点だと思っている。今回の改変は、時代を考えれば当然という印象。スターターのノブがボタンになったのも然りである。

素のカレラ、我々泣かせの理由とは?

華やかなカタルヘナイエローメタリックを纏った911カレラ。ひと通りのオプションが装着されているが、スポーツクロノパッケージが備わっている以外に、ドライブフィールに大きな影響を与えるものはなさそう。

ダッシュ右端のスターターボタンを押すと、いつもの乾いた咆哮が聞こえる。最新モデルなので音も吹け上がりもある程度、電子的な演出が含まれているはずだが、3対の91ミリ直径ピストンが76.4ミリの行程で打ち合う独特のフィーリングは唯一無二のものだ。

取材車はひと通りのオプションが装着され、スポーツクロノパッケージも備わっている。
取材車はひと通りのオプションが装着され、スポーツクロノパッケージも備わっている。    田中秀宣

普通に走る限り「ここが変わった!」という部分を看破するのは難しい。ステアリングは握りも操舵の感じも硬質、シートとフロアの結合も強く、ブレーキのタッチも上々。と言ってもそれはいつもの感触なのだ。つまり911を乗り継いできたオーナーがチョイ乗りしただけでハンコを押せる安心感のようなもの。

その感覚は我々泣かせでもある。「新しい911いいですよ!」から先の話題性が希薄なのだ。とはいえ乗り心地が良くなっていることは、今回高速から山道まで色々な乗り方をして実感できた。アシが柔らかくなったわけではないが入力に対しリアの動きが穏やかでフラットな走りに終始する。その要因は複合的なもの(?)、という部分も含め、最新の911は我々泣かせなのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    田中秀宣

    Hidenobu Tanaka

    写真が好きで、車が好きで、こんな仕事をやっています。
    趣味車は89年式デルタ・インテグラーレ。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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