【現役デザイナーの眼:トヨタ・プリウス】100点? 0点? デザインの評価軸

公開 : 2025.03.06 17:05

デザインの評価軸 『スタイル』と『社会性』

私は、クルマのデザインを評価する際には、大きく分けて2つの軸があると考えます。

ひとつ目の軸は『スタイル』です。造形の美しさ、新鮮さなど、クルマの見た目のデザインそのものを評価する視点です。

Aピラーの傾きがよく分かる、インテリアからの写真。
Aピラーの傾きがよく分かる、インテリアからの写真。    トヨタ

カーデザインは『プロポーション』→『サーフェース』→『ディテール』の順で見ていくと理解が深まります。

プリウスの『プロポーション』は、くさび型のシルエットが他のクルマとは似ていない唯一無二の個性を出しています。

『サーフェース』では、近年のトヨタ車によくある2つのボリュームの立体構成なのですが、繋ぎがスムーズなためリフレクションに動きがあり、それが高い質感を与えています。

最後の『ディテール』は、トヨタのデザインは時に造形過多になりがちなのですが、このクルマはディテール含めて全体的にシンプルで明快です。

ということで、この観点では大変素晴らしく、現行型プリウスのデザインは100点と言えるでしょう。

もうひとつの軸は『社会性』。そのクルマの社会での役割りです。

前述のように、日本市場では高齢者ユーザーが多く、長年プリウスを愛用してきた人が新型も選ぶケースが多いはずです。しかし旧型に比べて明らかに使いにくくなっており、乗降性の悪化や視認性の低下は、少なくとも日本国内のユーザーを考えたようには思えないです。この観点では、プリウスのデザインは0点と言っても良いです。

例えばポルシェ911でも『スポーツカー』として100点ですが、もしファミリーカーとして評価するなら0点でしょう。本当に良いデザインとは『目的に応じて』スタイルと社会性のバランスが取れているものだと思うのです。

では、次の世代のプリウスはどうなるのか? 今後のデザインの方向性に注目していきたいところです。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

現役デザイナーの眼の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事