フェイクじゃない4本マフラー 最新アウディSQ5へ試乗 3.0L V6ガソリンでしっかり「S」

公開 : 2025.03.11 19:05

367psの3.0L V6ガソリンターボ・マイルドHV

新しいSQ5へ搭載されるエンジンは、ディーゼルターボではなくガソリンターボ。拍手! 3.0LのV型6気筒で、最高出力367ps、最大トルク56.0kg-mを発揮する。

幅広い回転域で、見事にトルクフル。まるでディーゼルエンジンのように、低い回転域でも粘り強い。おかげで、アイドリングから僅かに回転を高めるだけで、素早く走り回れる。7000rpm以上まで吹け上がるが、その半分でも充分だ。

アウディSQ5(欧州仕様)
アウディSQ5(欧州仕様)

至って線形的に、パワーは湧出する。アルファ・ロメオ・ステルヴィオのV6エンジンほどドラマチックとはいえず、かつての直5エンジンのような個性もないが、薄味なわけでもない。素晴らしいユニットだと思う。

ドライブモードをダイナミックにすると、車内へ届く排気音が僅かに高まり、ドライバーの気持ちを刺激してくれる。デジタル的に補強されたものながら、適度に控え目で、聞き飽きる音質ではないだろう。

この3.0L V6はマイルド・ハイブリッドで、1基はエンジン側、もう1基はトランスミッション側、合計2基の電気モーターが組まれている。駆動用バッテリーは、1.7kWh。24psのアシストが可能で、限定的ながら電気だけでの走行も可能とのこと。

エンジンとモーターの協調性は優れるが、減速時は回生ブレーキが優先。摩擦ブレーキを使うには、一段強めにペダルを踏む必要がある。すぐに慣れるものの、意図した制動力を引き出しにくいことは確か。今回は、電気だけで走る機会はなかった。

エアサスで快適な乗り心地 良好な姿勢制御 

サスペンションは、アダプティブダンパーにエアスプリングが標準。セットアップは煮詰められ、従来のSのように、強い衝撃が骨へ染みるようなことはない。最もハードにしても、普段使いに問題ないだろう。

印象的なほど快適でありつつ、約2tある車重を手中に収め、姿勢制御は良好。設置感が高い、減衰特性も褒められる。

アウディSQ5(欧州仕様)
アウディSQ5(欧州仕様)

ステアリングホイールは軽めだが、フィードバックは充分。ダイナミック・モードでは、重くなるだけでなく、しっかりフィードバックも増す様子だった。基本的には安定志向なシャシーだが、積極的に操ることで、カーブで遊ぶことも不可能ではない。

そのステアリングホイールは、リムのアウトラインが四角へ近い。緩やかなカーブでは特に困らないものの、ヘアピンやロータリー交差点で回しにくく感じる人はいるだろう。

まるで、握る位置が制限されているように、筆者は感じた。SQ5はサーキット以上に、ショッピングモールの駐車場を走る可能性が高いのだが。

トランスミッションは、7速デュアルクラッチ・オートマティック。機械任せの変速は、滑らかで的確。ダイナミック・モードでは、素早いシフトダウンが気持ち良い。反面、コンフォート・モードを選ぶと、それが抑制される。

より意のままに運転したい場合は、マニュアル・モードがベター。シフトパドルを何度か弾けば、積極的にギアを選びつつ、フロントへ荷重を載せながらコーナーへ飛び込める。後方からは、高性能なSUVであることを強調するように、排気音が重なる。

SのエンブレムにふさわしいSUV 価格はお高め

新しいSQ5は、Sのエンブレムにふさわしい、有能なSUVに仕上がっている。パワートレインとサスペンションは素晴らしく、高速で快適で、普段使いもしやすい。

新鮮味を増したい場合は、お好みでクーペ風のスポーツバックも悪くない。視覚的な喜びが増すだろう。ただし、インテリアは期待値に届いていないかも。それを踏まえると、価格設定が強気に感じられてしまう。

アウディSQ5(欧州仕様)
アウディSQ5(欧州仕様)

◯:パワフルで扱いやすいエンジン 驚くほど快適な走り ファミリーSUVとして不満ない車内空間
△:お高めの価格 より走りで魅力的な高性能SUVは、同クラスに存在する

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    役職:デジタル編集者
    10年以上ジャーナリストとして活動し、雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿してきた。現在はオンライン版AUTOCARの編集者を務めている。オースチンやフェラーリなど、1万円から1億円まで多数のクルマをレビューしてきた。F1のスター選手へのインタビュー経験もある。これまで運転した中で最高のクルマは、学生時代に買った初代マツダMX-5(ロードスター)。巨大なジャガーXJ220も大好き。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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