技術で克服できないものはない!やっとわかったアウディらしさ【日本版編集長コラム#52】

公開 : 2025.10.19 12:05

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、『日本版編集長コラム』です。最近乗ったクルマの話、取材を通じて思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第52回はA6 eトロンとQ5の試乗を中心に、最近のアウディがテーマです。

明確に言語化するのは意外と難しい

今回のテーマは『最近のアウディ』、である。

さてアウディと聞いて、その印象を明確に言語化するのは意外と難しいと思う。少なくとも、これまで私はそう思ってきた。しかしこうして原稿を書き始めたのは、言語化の糸口が見つかったからだ。

最初に乗ったのは『アウディA6アバントeトロン・パフォーマンス』。
最初に乗ったのは『アウディA6アバントeトロン・パフォーマンス』。    平井大介

今年の日本におけるアウディはモデルラッシュで、既にA5とQ6 eトロンを発表。筆者はいずれも試乗済みで、特に後者は高速道路を中心に100kmほど乗らせて頂いた。

そこで思ったのが冒頭の話で、技術的に様々な試みを行っているのは理解できるのだが、クルマとしての基本的な魅力がわかりにくいと感じていた。もう少し平たく書くと、面白みにかけると思ってしまったのだ。

そんな中で先日開催された、『アウディA6 eトロン』及び『アウディQ5』のメディア向け試乗会に参加することができた。

これは7月24日に同時発表された新型モデルで、前者はeトロンということでBEV、後者は全車ICE(ガソリンとディーゼル両方あり)のマイルドハイブリッドとなる。試乗車は『A6アバントeトロン・パフォーマンス』と3L V6ターボの『SQ5スポーツバック』だ。

糸口は試乗前のプレゼンで見つかった。それはアウディにおける現在のトレンドが、『運転を楽にしたい』ということだ。こうして文字にすると当たり前のようにも思えるが、それを聞いた時、全てが腑に落ちた。なるほど、だからアウディに面白みを感じなかったのかと。

乗りやすさとBEV=eトロンは相性がいい

というわけで、以後の試乗は運転の楽さ、乗りやすさを確認する作業となった。

まず試乗したのは、A6 eトロン・アバント。今回の特徴は何といっても、国内最長となる846kmの航続距離だが、距離だけでなく質感にも注目して欲しいという話がプレゼンあった。

真横から見ると床下にバッテリーがある分だけ車高が高く、ドアに厚みがある。
真横から見ると床下にバッテリーがある分だけ車高が高く、ドアに厚みがある。    平井大介

乗っていてまず気がついたのは、大径気味のステアリングの上側と下側が切ってあり、台形となっていることだ。これは上側のラインとダッシュボード上面が同じ高さになっていて、視界のよさに繋がっていた。ステアリングの操作感自体は軽めで、ストレスが少なく感じた。

ウインカーをつけると、ダッシュボード奥で曲がる方向にイルミネーションで光が流れて、これまたわかりやすいと感心。ヘッドアップディスプレイも視認性が高い。

また、車幅は1920mmもあり、今回試乗した箱根の一般道ではオーバーサイズ気味のはずだが、クルマの大きさが掴みやすく、すぐに慣れることができた。車重は2250kgもあるが、峠道のフットワークは悪くない。

そして何より一番好感を持てたのは、そういった乗りやすさとBEV=eトロンの相性のよさ。そこにICEの振動や音が存在しなことで、快適さが増しているように感じたのだ。981万円という車両価格(試乗車は1012万円)もBEVとしてはいい線に思えた。

個人的な好みでいえば、スタイリングは少し重々しく感じるが、それには理由があった。アウディはこれまで、真横から見た時に窓とドアパネルの比率を1:2としてきたが、床下にバッテリーが入るため1:3に変更。その分、下側を黒くすることで、バランスをとったという。

そういった説明を聞いて実車を改めて見ると、確かに下半身に厚みがある雰囲気だ。着座位置も若干高めとなっている。それでもSUV全盛の中で、こうしたワゴンボディも残してあることに好感が持てた。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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