レトロな姿にマッスルカーの響き メルセデスAMG G 63へ試乗 4.0L V8はマイルドHVに

公開 : 2025.04.20 19:05

0-100km/h加速4.3秒 油圧のアクティブライド

エンジンは4.0L V8ツインターボガソリンで、21psと20.4kg-mをアシストするISGが組み合わされ、最高出力611ps、最大トルク86.5kg-mという剛腕。最高速度は220km/hへ制限されるが、9速ATが組まれ、0-100km/h加速を4.3秒で処理できる。

5.5LのM157型ユニット級ではないものの、サイド出しのテールパイプから放たれる重厚で威圧的なサウンドは、市街地では建物へ反響し良く聞こえる。レトロな見た目に、マッスルカーのような響き。つい笑顔が浮かんでしまう。

メルセデスAMG G 63(英国仕様)
メルセデスAMG G 63(英国仕様)

控え目さを望む人には、まったく向いていないSUVだ。もう少し落ち着いたGクラスをお考えなら、直列6気筒エンジンのメルセデス・ベンツG 500が良いかもしれない。

最新世代のAMG G 63で目玉となる技術が、AMGアクティブライド・コントロールと呼ばれるサスペンション。スタビライザーバーは油圧システムに置換され、油圧ダンパーは相互接続され、洗練されたマナーを実現している。

オンロードでは、ボディロールを減らすため減衰力を上昇。オフロードではソフト側へ振られ、設置性を高めるという。

メルセデス・ベンツの技術者の1人は、アウトバーンで飛ばしている最中、3秒前に予測的にステアリングホイールを切る必要がなくなったと話していた。皮肉的な表現だが、彼の意図は理解できる。確かに、滑らかさと正確性は増している。

驚くほど扱いやすい モダンなSUVへ近づいた

歴代で最も操縦性に優れた、Gクラスになったことは間違いない。だが、競合の上級SUVへ並んだわけではない。油圧アンチロールバーが懸命に機能しても、ボディの高さと質量、リジットアクスルが支えるリアタイヤを丸め込むことは難しい。

凹凸や起伏を通過すると、ボディは上下と前後左右へ振られ、落ち着きにやや欠ける。荒れた路面では、コーナリングラインが乱れがちで、旋回中にアクセルペダルを踏み込むと、四輪駆動のトラクションを持ってしてもトルクステアでラインが振られる。

メルセデスAMG G 63(英国仕様)
メルセデスAMG G 63(英国仕様)

ステアリングホイールの切り始めには、遊びが多い。連続するカーブを高速で抜ける場合は、腕を沢山動かす必要がある。それでも驚くほど扱いやすく、ボディロールは抑制され、大きさをさほど感じさせない。ずっと、モダンなSUVへ近づいたといえる。

乗り心地は、デフォルトでは優しく、高速道路へ最適化されている。その速度域では、風切り音が大きいけれど。スポーツ+モードを選ぶと、アフターファイヤーの爆発音を楽しめるものの、サスペンションは明確に硬くなる。インディビジュアル・モードなら、ダンパーをソフトにしつつ、派手な排気音に興じれる。

悪路性能は間違いなし。グラベルの高速コースを飛ばしてみても、荷重移動を簡単に調整でき、恐れることなく駆け回れる。低速でクリアするような岩場や砂地では、高度なサスペンションとトラクションプロ・モードが効果的に働く。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    役職:デジタル編集者
    10年以上ジャーナリストとして活動し、雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿してきた。現在はオンライン版AUTOCARの編集者を務めている。オースチンやフェラーリなど、1万円から1億円まで多数のクルマをレビューしてきた。F1のスター選手へのインタビュー経験もある。これまで運転した中で最高のクルマは、学生時代に買った初代マツダMX-5(ロードスター)。巨大なジャガーXJ220も大好き。
  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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