【第7回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~ハイドロプレーニングのハナシ~

公開 : 2025.04.16 17:05

慌てず待つのが最善の対処

タイヤの残溝の違いによるハイドロプレーニングの様子を比較したことがあります。その時は、新品タイヤと残溝2mmまで削ったタイヤでのブレーキ比較をしました。新品タイヤは排水性が高く、水がタイヤの溝を通ってきれいに後ろに排水されますが、残溝2mmのタイヤは、排水しきれない水をタイヤの前に押し出してしまい、さらに止まりにくくなっていることが確認できました。

タイヤが摩耗して排水性能が悪くなると、簡単にハイドロプレーニングが起きるようになってしまうわけです。

タイヤの状態に注意を払い、それにあった車速で走ることが大事。それでもハイドロプレーニングが起きたら、ステアリングを切らず、アクセルを戻して、慌てずに収まるのを待ちたい。
タイヤの状態に注意を払い、それにあった車速で走ることが大事。それでもハイドロプレーニングが起きたら、ステアリングを切らず、アクセルを戻して、慌てずに収まるのを待ちたい。    斎藤聡

対処法はありません。水深と自分のタイヤの残溝を考えながら、車速を選ぶのが最も良い方法だと思います。水深の深い路面に入ると強い水の抵抗感がありますから、それを感じたら車速を落とすのがいいと思います。もしタイヤが摩耗していて、残溝4mm以下になっていたら、特に車速には注意が必要です。

先ほどの実験の際は、80km/hからのフルブレーキで行いましたが、高速道路を走行中にハイドロプレーニングが起こったからといって、フルブレーキをかけると後続車に追突される危険性が高くなります。

また、むやみにハンドルを切ると、タイヤが路面に接地した瞬間にハンドルを切っている方向にクルマがすっ飛んで行きますので、ステアリングは真っ直ぐ保持するのが基本です。

水の抵抗は案外大きいので、ハイドロプレーニングが起こっても慌てず、ステアリングを切らず、アクセルを戻して待っていれば、間もなくハイドロプレーニングは収まります。とんでもないスピードで走っていない限りは7回転半のスピンなんてしません。

まだ雨の話題には少し早いかもしれませんが、最近は春から夏にかけて、まるで亜熱帯のようにスコールのような激しい雨が頻繁に降るようになってきているので、くれぐれも気を付けてください。またタイヤが摩耗している方は、梅雨前のタイヤ交換をおすすめします。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

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