【現役デザイナーの眼:レクサスES】高身長を感じさせないデザイン力
公開 : 2025.05.27 08:05
現役プロダクトデザイナーの渕野健太郎が、旧型比+115mmという全高を持つレクサスESを解説。デザインの秘訣は、プランビューやボンネット両端の設計にありそうです。
全高が高くなることの難しさ
8代目となる新型 『レクサスES』が、上海モーターショーでワールドプレミアされました。レクサスでは『次世代電動車ラインアップの先陣を切るモデル』としています。
全長5140mm(旧型から165mm拡大)、全幅1920mm(同55mm拡大)、全高1560mm(同115mm拡大)と、旧型から大幅にボディを拡大した事が話題になっていますが、このうち私が注目したのは、全高が旧型から115mmと、大幅に高くなった事です。

一般的にカーデザイナーは、実に様々な制約の中でデザインをしています。今回、ESの全高が高くなった要因は、居住空間の充実だけでなく、床下にバッテリーを積むBEVをラインナップに取り入れた結果だと推測しますが、『全高1560mm』というのはクラウン・クロスオーバー(1540mm)より高く、セダンのデザインにおいて相当困難なものです。
しかし、それを感じさせることなく『レクサスの高級セダン』として成立させているところがまずポイントで、見る側(一般の方)はそんな苦労があったとは一見分からないですよね。具体的な手法は後述しますが、それがデザインの力なのだと感じます。
例えば現行型BMW7シリーズもBEV化の影響もあり、旧型から64mm車高が上がったのですが、BMWはこのパッケージをマッシブなデザインに繋げました。旧型までのスリークなデザインから大幅にイメージチェンジしたので賛否両論ありましたが、もしかしたらスリークなデザインを『あきらめた』のかも知れません。
自動車開発におけるデザインの制約としては、人やパワーユニット、タイヤの位置などが最初に決められる他、衝突や歩行者保護、空力などの各種性能目標や、コスト管理、生産要件などの商品として成立させるためのもの、さらには空間の広さや視界の良さ、荷室の大きさなどの実用性の目標値など、デザインに直接関わる様々な各種要件を全て網羅して開発を進めます。
これは、言うなればパズルのようなもので、最後のピースをはめ込むまで、気が抜けない開発を長い期間かけて行うのです。
サイドビューで感じる、造形の工夫
具体的にデザインを見ていくと、車高がかなり高くなったパッケージにも関わらず、果敢にセダンとしてのプロポーションを追求しています。全長、全幅が大きく拡大したのは、商品性ももちろんありますが、セダンとしてのバランスを取るためでもあると思います。
しかしこれだけでは当然足りません。サイドシルエットを見ると、グリルの上端がだいぶ低い位置にあり、ボンネットが前端で大きく落ちていることが分かります。これでフロントを低く、ワイドに魅せているのです。

トランク後端までなだらかに繋がっているルーフラインも、キャビンを出来るだけ長く見せようとする必然の策だと思います。通常、レクサスはルーフのピークを後方に持ってきて、楔形のシルエットを形成する車種が多いのですが、そのような『造形しろ』も全く無かったのでしょう。
ですので、サイドシルエットとしては前述のボンネット前端以外、かなりオーソドックスと言えるかもしれません。
しかし、その分プランビュー(上面から見た図)で面白さを出していて、トヨタ車でよくやる『前後ふたつのボリュームを嵌合(かんごう)』させることによるダイナミックな構成になっています。
この手法は、大きく言えばプリウスやクラウンスポーツなど、リフレクションの動きを見せたいデザインによく採用されているものですが、ESではその『嵌合の仕方』がかなり斜めになっており、他の車種と比べてスムーズなものになっています。また、ドア面の特徴的な黒樹脂部分も、ボディを薄く見せる事に役立っているのでしょう。

















