欧州最大級のバッテリー工場建設開始 タタ、英国で年間40GWh生産へ

公開 : 2025.07.02 07:45

タタ・グループ傘下のアグラタスは、英国サマセット州にEV用バッテリーの生産工場の建設を開始しました。生産能力は年間40GWhと、欧州最大規模となります。数千人の雇用創出など、国内には若干明るいムードが漂います。

JLR以外にも供給予定

欧州最大級のEV用バッテリー工場の建設が、英国サマセット州ブリッジウォーターで始まった。2027年に稼働開始を予定している。

JLR(ジャガーランドローバー)の親会社であるタタ・グループが所有するバッテリー子会社アグラタスは、同工場に40億ポンド(約7880億円)を投じている。

すでに1棟目の基礎工事が完了し、鉄骨が組み立てられた。
すでに1棟目の基礎工事が完了し、鉄骨が組み立てられた。

月曜日には、主要生産棟の鉄骨が組み立てられた。鋼材はすべて英国国内のサプライヤーから調達されている。次の棟の建設工事は数日以内に開始される見込みで、現在基礎工事の最終段階に入っている。

アグラタスの製造オペレーション担当副社長、アール・ウィギンズ氏は、この工場を「世界トップクラスの施設」と表現し、「英国のEVサプライチェーンにおいて重要な役割を果たすでしょう。サマセットでの成長とイノベーションが、その中心となります」と語った。

1週間前、英国政府は国内先進製造業の強化とバッテリー分野の発展・成長を支援する新たな産業戦略を発表したばかりだ。サラ・ジョーンズ産業大臣は、「アグラタスのギガファクトリーは、英国のバッテリー製造業の大きな成長可能性を示すもので、大変喜ばしい」と述べた。

タタのインド本土以外でのバッテリー工場はこれが初めて。運営はアグラタスが担当し、最終的に年間40GWhの生産能力を確保する予定で、実現すれば欧州最大級の工場となる。

その生産能力は、2030年までに予想される英国のEV生産需要のほぼ半分に相当する。

工場の正式名称は未定だが、『アグラタス・サウスウェスト』という名称になると予想されている。

当初はタタ・モーターズとJLR向けのバッテリーを生産し、その後、商用車、二輪車、蓄電施設など、さまざまな用途向けに拡大する予定だ。

同工場では4000人を雇用するが、タタはサプライチェーン全体で数千人の雇用創出につながると予測している。

生産されるバッテリーセルは、BMWテスラが採用する円筒形ではなく、角形となる。タタは、新たな技術革新に応じてセル構造を調整・変更できると発表している。

国内産業は「若干」明るいムードに

英国産業界では将来のEVシフトに関して長年不透明感が漂っていたが、タタの進出は一定の安心感をもたらしている。

しかし、英国が競争力の維持に必要な量のバッテリーを生産できるかどうかについては、依然として疑問が残る。バッテリーに関する調査団体、ファラデー・インスティテューションは、英国では2030年までに100GWhの生産能力が必要となり、2040年には200GWhに倍増すると予測している。

タタ・グループ傘下のアグラタスは同工場に40億ポンド(約7880億円)を投じる。
タタ・グループ傘下のアグラタスは同工場に40億ポンド(約7880億円)を投じる。

しかし、タタのサマセット工場の40GWhに加え、英国でバッテリー生産拡大の具体的な計画を立てているのは日産サプライヤーのエンビジョンだけだ。同社はサンダーランドのバッテリー工場の生産能力を38GWhまで拡大する予定だ。

タタのサマセット工場は欧州最大級で、この規模を上回るのはLGのみとなる。LGはポーランドの工場を将来的に70GWhまで拡張する予定で、アウディ、ジャガー、メルセデス・ベンツポルシェルノーボルボにバッテリーを供給する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    役職:ニュース編集者
    ニュース編集者としての主な業務は、AUTOCARのニュースの方向性を決定すること、業界トップへのインタビュー、新車発表会の取材、独占情報の発掘など。人と話したり質問したりするのが大好きで、それが大きなニュースにつながることも多い。これまで運転した中で最高のクルマは、アルピーヌA110。軽快な動きと4気筒とは思えないサウンドが素晴らしい。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事