フォーカスSTエステート vs プジョー308 SW vs セアト・レオン・エステート

公開 : 2015.03.16 23:40  更新 : 2017.05.29 19:32

レオンはクリーンなルックスが、フォーカスはエッジの立ったルックスがまずわれわれの目を引くのに対して、プジョー308はインテリアの質感で勝負を仕掛ける。

結果的に価格を超えた質感とルックスを兼ね備えているのは308のみである。対するレオンはフォルクスワーゲンの典型的なそれ。したがって中程度の質感と均整のとれたレイアウトを実現しているが、思わず見入ってしまうほどの感動は残念ながらない。

フォーカスは2台とまったく異なった理由で注目を集める。たしかにドライビングのことを考えるならば理想的ではあるのだが、なにしろ情報の伝え方と操作性に難がある。

ここ最近のアウディのコンセプト・モデルのインテリアのようにミニマリズムを踏襲しながら、なおかつ目で見ても手で触れても心地よい素材を選んでいたのはプジョー308のみである。

ステアリング上部が完全にメーターを遮ってしまう設計はいただけないが、それでも308のインテリア・デザインには長く乗ったとしても飽きや疲れが押し寄せてこないと感じた。

続いてパワートレインに関して。他同様に2.0ℓエンジンを搭載しているが、完成度は圧倒的にセアトが優っている。

特にそう感じさせるのは、典型的なディーゼル・ユニットのガラガラ音がほぼ完璧に消し去られているから。加えて1500rpm前後から強大なトルクが流れ込んでくるうえ、優秀なギアボックスが好印象をもたらしているのだろう。

これに対してプジョーフォードはまったく別のアプローチをしてくる。特にプジョーは、とにかくエンジン音を大きくする手法を採り、スポーツ・モード時では耳で楽しませようとしていることが伝わってくる。人工的すぎる印象も否めないが、鬱陶しいと感じるほどではない。

フォードの場合は、室内でエンジン音を反響させているようだ。これはこれで、ドライバーを活気づける立派な演出になっているといえる。

プジョーとフォードを比べると、(実際にそうでないにしても)フォードの方が速く感じられる。スポーツ・モード時のスロットル・マップがシャープであることが理由のひとつなのだろう。

総合的には3台ともに、スポーティなキャラクターを打ち出す素質はきちんと確保されている。どれも ’現実を忘れてしまうほど’ のものではないが、楽しさを求める者の期待には応えてくれるはずだ。

ここからさらに本気で楽しもうとすると、それぞれのモデルには隔たりができはじめる。

特にセアト、本気で楽しいクルマとは程遠い立ち位置にある。十分に速いうえ、路面状況を問わず懐が広いだけでなくエステートになったことによる不利な点も無いのだが、アシスト過多のブレーキが致命的なのである。

それを置いておいたとしても、やはり楽しみに欠けるのは事実。距離が伸びれば伸びるほど、次第に笑顔が遠のいてしまう。またステアリングのフィールの希薄さも減点ポイント。お世辞にも楽しいクルマだとは言い難い。

反面、308は楽しさの演出がうまい。小径(すぎる)ステアリングと不必要に太いステアリング・リムに目を瞑りさえすれば、セアトに劣る部分は何ひとつとして無いといっていいい。

特に光るのが敏捷性。本気の走りの一歩手前くらいでもっとも輝いている。ここからさらに速度を速めると、それまでの安定性はほろりほろりと崩れはじめる。

同クラスでトーションビーム式サスペンションに固執するメーカーはプジョー以外にあまり見られないが、やはり目先だけのコスト削減は良い結果を生まないのだと実感した次第。ハイスピード走行はあまり期待できない。

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