強い個性へ共感? ホーク・エステートとスーパースナイプ(2) 著名人に選ばれたハンバー

公開 : 2025.08.31 17:50

上級ワゴンの先駆けといえたホーク・エステート 著名人に選ばれたスーパースナイプ 過剰設計でも錆びやすいボディ 戦前の香りが否めないシャシー UK編集部が個性の強いハンバーを振り返る

かつての高級ステーションワゴン

今回ご登場願ったハンバー・ホーク・エステート・シリーズIVとスーパースナイプ・シリーズVは、クラシックカー博物館のグレート・ブリティッシュ・カー・ジャーニーが管理する車両。いずれもモデル末期の仕様で、当時のナンバープレートを維持している。

ホーク・エステートの初代オーナーは、ムーアズ殺人事件の判事、フェントン・アトキンソン氏。15インチ・ホイールを履き、堂々とした風格を滲ませる。防音材が張られたボンネットを開くと、1950年代らしい景色が広がる。

ハンバー・ホーク・エステート・シリーズIV (1957〜1967年/英国仕様)
ハンバー・ホーク・エステート・シリーズIV (1957〜1967年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

テールライトのリフレクター部分は、給油リッドを兼ねている。テールゲートは上下二分割で、荷室も美しく仕立てられ、かつての高級ステーションワゴンだと実感させる。

ドアは深い角度まで開き、綺麗に閉まる。サイドウインドウは手動のワインダーだが、動きは滑らか。ウッドパネルの質感は、上級仕様のスーパースナイプに届かないけれど。後期型でシートはPVC張り。ハンバーの工場を旅立ったばかりのように、真新しい。

ピクニックテーブルにロールス風の小物入れ

サルーンのスーパースナイプでは、後席の前方へピクニックテーブルが備わる。グローブボックスはホーク・エステートよりひと回り大きく、ロールス・ロイス風のシャッター付き小物入れも用意されている。

シートやドアの内張りはグリーンのレザーで、特有の香りが漂う。ウッドパネルは艶が強すぎるが、本物のウォールナットだ。

ハンバー・スーパースナイプ・シリーズV(1958〜1967年/英国仕様)
ハンバー・スーパースナイプ・シリーズV(1958〜1967年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

どちらのダッシュボードにも、メーターの上にハイビームやイグニッションの警告灯が並ぶ。ヒーターとファン、チョークのスイッチは滑らかに動く。

変速の必要性を感じさせないトルク

スーパースナイプの3.0L直列6気筒エンジンは、60km/hまで颯爽と全長4775mmのサルーンボディを引っ張る。トルクが太く、変速の必要性を感じさせない。アイドリング時から、聞き心地の良いサウンドを静かに響かせる。

コラムから伸びるシフトレバーは正確にゲートを選べ、動きも軽い。2速からでも活発な加速を披露し、130km/hでの巡航も余裕綽々。同時期のライバルを追い越すのに、不満ない余力を残している。

ハンバー・ホーク・エステート・シリーズIV (1957〜1967年/英国仕様)
ハンバー・ホーク・エステート・シリーズIV (1957〜1967年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ホーク・エステートの2.3L直列4気筒も軽々と回り、マイルドなノイズを微かに響かせる。最高速度は136km/hだが、体感的にはさほど非力な感じはない。前輪のディスクブレーキはサーボで強化され、制動力は充分。直進安定性も褒められる。

ステアリングは、スーパースナイプはパワーアシストされ、軽快に回せるもののセンターへ戻るのに僅かな遅れがある。ホークの方が、身軽にフロントノーズを操れる。気張るとボディロールは大きく、アンダーステア傾向で、スキール音は小さくないが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ホーク・エステートとスーパースナイプの前後関係

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