【魂動デザインの現在地と未来】長年の牽引者、前田育男さんインタビュー(後編)やりきったコンパクト、七転八倒したクーペ! #JMS2025

公開 : 2025.11.12 11:50

マツダはジャパンモビリティショー2025で最新の魂動デザインを纏う、2台のコンセプトを初公開しました。ではこの2台について長年、魂動デザインを率いて来た前田育男さんに内田俊一が会場で話を聞きました。その後編です。

あえて苦労する道を選んで

マツダジャパンモビリティショー2025で2台のコンセプトモデル、『ビジョン・クロスクーペ』(以下、クーペ)と『ビジョン・クロスコンパクト』(以下、コンパクト)をワールドプレミア。いずれも最新の魂動デザインを纏うものだ。

ではこの2台について長年、魂動デザインを率いて来た前田育男さん(現マツダ・エグゼクティブフェローデザイン・ブランドスタイル監修)はどう感じたのか、会場で話を聞いた。その後編となる。

マツダが初公開したビジョン・クロスクーペ(左)とビジョン・クロスコンパクト(右)。
マツダが初公開したビジョン・クロスクーペ(左)とビジョン・クロスコンパクト(右)。    山田真人

Q:では今回の2台のコンセプトモデルについてお伺いします。コンパクトはやり切った感が伝わってきます。

前田:結構苦労して作った2台です。確かにコンパクトはそうですね。こちらの方がメッセージとしてすごい伝わりやすいです。クーペもやりきった感はあるんですけど、かなり難しかったんです。難易度はこちらの方が圧倒的高いんですよ。

Q:サイズが大きいですから、動きを出すのもすごく大変だと思います。

前田:作りもすごく繊細ですし。

Q:今回は引き算の美学として、光の移ろい、リフレクションをも引いて塊として見せて来ましたが、とても難しいチャレンジですね。

前田:それを敢えてやったんです。コンパクトは割とイメージが最初にぱっと浮かびましたので、早いタイミングで形ができたんですが、クーペは七転八倒でした。

Q:七転八倒するとどうしても簡単な方に行きがちだと思うんですが、そのあたりはいかがですか?

前田:絶対にレベルを落とさないという、デザイナーの覚悟です。実はこのクーペは誰も見ていないまま、組み上げた工場からダイレクトに会場に送られてきてるんです、時間がなくて。

クーペはあえて完成しにくい方向でトライアルをしている

Q:ではここで見てどう思いましたか。

前田:そういう状況でしたから、いろんなことが頭に浮かんでました。でもここで初めて見た時に、だいぶ良いところまで来たなと。ただ100%ではないですけどね。

次期マツダ2とも言われる、ビジョン・クロスコンパクト。
次期マツダ2とも言われる、ビジョン・クロスコンパクト。    山田真人

Q:それぞれ前田さんとしては何点でしょうか。

前田:そう来ましたか(笑)。クーペは70点くらいかな、ボーダーは超えています。コンパクトは90点くらいですね。クーペはあえて完成しにくい方向でトライアルをしているので、もっと完成度を上げることはできたんです。もっと目に馴染む形にもできたし、素直に格好良いものもできたのですが、敢えてそこを外しました。

やはり楽な方に行きがちじゃないですか。でもメンバーにはそっちに落ちるな、難しい方に行けって、失敗してもいいからっていう話をしてこのモデルになりました。

ですから(魂動デザインの)次というのはなかなか産めないんですよ。そんな簡単に正解が出るようなものだったらAIが作りますからね。

Q:そこで前田さんの監督の目が光ると。難しいことにトライしないと次にいけないですよね。

前田:いけない。だからクーペを写真でインプットしてAIに格好良くしろっていったら格好良くしてくれますよ。それはでもAIでできる形ですからね。でもこのクーペはそうじゃないところにいきたいという思いがこもっています。

Q:やはり人の手が入るデザインとAIとでは全然違ってきますね。

前田:あのフォルムはAIでは絶対作れない。我々は反逆児ですからね。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 撮影

    山田真人

    Makoto Yamada

    1973年生まれ。アウトドア雑誌編集部からフリーランスカメラマンに転身。小学5年生の時に鉄道写真を撮りに初めての一人旅に出たのがきっかけで、今だにさすらいの旅をするように。無人島から海外リゾート、子どもからメガヨットと幅広い撮影ジャンルを持つ。好きな被写体は動くものと夕陽。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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