【魂動デザインの現在地と未来】長年の牽引者、前田育男さんインタビュー(前編)完成形まではあと5年! #JMS2025

公開 : 2025.11.12 11:45

マツダはジャパンモビリティショー2025で最新の魂動デザインを纏う、2台のコンセプトを初公開しました。ではこの2台について長年、魂動デザインを率いて来た前田育男さんに内田俊一が会場で話を聞きました。その前編です。

20年かけて完成させる

マツダジャパンモビリティショー2025で2台のコンセプトモデル、『ビジョン・クロスクーペ』(以下、クーペ)と『ビジョン・クロスコンパクト』(以下、コンパクト)をワールドプレミア。いずれも最新の魂動デザインを纏うものだ。

ではこの2台について長年、魂動デザインを率いて来た前田育男さん(現マツダ・エグゼクティブフェローデザイン・ブランドスタイル監修)はどう感じたのか、会場で話を聞いた。その前編となる。

ジャパンモビリティショー2025にて、マツダ・ビジョン・クロスクーペと前田育男さん。
ジャパンモビリティショー2025にて、マツダ・ビジョン・クロスクーペと前田育男さん。    内田俊一

Q:魂動デザインがスタートして、およそ15年経ちました。

前田育男さん(以下敬称略):まず、僕の中で魂動デザインは20年かけて完成させるという計画を持っています。そしていま15年目ですから、あと5年、木元(現デザイン本部長の木元英二さん)たちからすると、僕がいるのは邪魔かもしれないですけどね(笑)。つまりいま、ファイナルステージ手前の5年という位置にいるんです。

ですから(この2台は)だいぶ完成形に近づいてきているんですね。ただ、まだできてないところもありますから、そういう意味でエクスペリメンタルな実験車両という見方です。そしてまだいける、できるところがあるぞというのを、あと5年間で探してゴールを迎えたいですね。

Q:言葉での表現が難しいかもしれませんが、前田さんの中で、魂動デザインがどうなったらゴールなんでしょう。

前田:とても難しいですが、世の中の人たちが普通に見て、世界一のデザインチームがマツダだねといってもらえるぐらいの形の強さ、それはメッセージやクオリティも含めてですが、そうなったら(ゴール)でしょうね。

もちろん方向性はいろいろあるとは思います。しかし、そういうところまでいけばデザインのマツダ、世界のトップだと思われると思っています。そうしたら僕はいなくなっていいかなって感じですね。

Q:いま仰った、まだできていないところを教えてください。

前田:ビジョンモデルとしていろいろスタディをやってきていますが、それがダイレクトにプロダクションにまでまだ落とせていないんです。「そのまま落としてくれよ」という意見がいっぱいある中で、当然僕もそう思っているんですが、一番はそこですね。

魂動デザイン=前田さん

Q:いなくなってもいいかなと仰いますが、魂動デザイン=前田さんというイメージができていますし、それはマツダとしても使っていくべき資産だと思うんです。ですからやはり、しばらくは魂動デザインの前田さんとして活動を続けて欲しいです。

前田:使い倒してもらった方がいいですよね。というのはメッセージ性のあるデザインに名前がついているものは、世界中探してもこれしかないんです。ですから『魂動デザイン』は有名になっていて、海外でも『KODO』と言ってもらえています。そこまで来たんだったら、最後まで使い倒して、そして魂動デザインを昇華させていきたいですね。

その名が定着した『魂動デザイン』は、海外でも『KODO』と呼ばれている。
その名が定着した『魂動デザイン』は、海外でも『KODO』と呼ばれている。    山田真人

Q:そこで聞きたくなるのが、魂動デザインの次がどうなるかです。

前田:次は木元が考えないといけないんです。ですから彼がもっと強いメッセージ性のあるものを出すのであれば、魂動デザインという名前を下ろしてもらってもいいんです。だから僕の中で魂動デザインをきっかけにマツダのデザインがスタートして、そういう完成形を見たら、もう『マツダ・デザイン』でいいとも思うんですよ。

もちろん魂動デザインでずっと行ってもらってもいいし、これは木元やその次のリーダーになるメンバーたちが、自分たちで、自分たちのこととして考えて欲しいんです。簡単なことではないので、それだけの覚悟が彼らにあるかどうかです。

(後編につづく)

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 撮影

    山田真人

    Makoto Yamada

    1973年生まれ。アウトドア雑誌編集部からフリーランスカメラマンに転身。小学5年生の時に鉄道写真を撮りに初めての一人旅に出たのがきっかけで、今だにさすらいの旅をするように。無人島から海外リゾート、子どもからメガヨットと幅広い撮影ジャンルを持つ。好きな被写体は動くものと夕陽。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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