英国名門ブランド MG再起の裏側(後編) トレンドを掴むデザイン、待望のスポーツカーも

公開 : 2025.11.11 11:45

SAIC会長を唸らせたスポーツカー

ゴッサム氏は、MGデザインで働く最大の魅力はチームの比較的自由な活動範囲だと語る。スタジオは中国主導プロジェクトの支援業務も担うが、多くの新規プロジェクトでは自ら主導権を握り、通常は「テーマ選定」段階(車両の全体的な外観が決定される時点)まで進める。その後は中国が引き継ぎ、実物大モデル(ロンドンでは製作不可)の製作とエンジニアリングを担当する。

スポーツカーのサイバースターは多くの点で異例と言える設計だった。ゴッサム氏がMGのデザイン責任者(現:先進デザイン責任者)に就任するとほぼ同時に、「手に入るものなら何でも使って」MGスポーツカーを作ると宣言した。現代のMGスポーツカーを買うのは誰か、そしてそれはどんなクルマになるのか? その答えを探っていった。

MGが久々に投入したスポーツカー『サイバースター』
MGが久々に投入したスポーツカー『サイバースター』

サイバースターの開発はいわゆる「スカンクワークス」方式で進められたため、長い時間を要した。つまり、スタッフは他の業務もこなさなければならなかった。正式な開発サイクル計画に組み込まれておらず、シザードアの設計など前例のない課題が山積みだった。中国では前例のないプロジェクトだったため、経営陣の理解を得ることが重要だった。中国から上司が視察に来た際、ゴッサム氏はマツダMX-5(日本名:ロードスター)を借りて昼食に連れて行った。

サイバースターのコンセプトモデルは、ロックダウンの影響で開発者不在のまま北京モーターショーのSAICブースで公開された。直接アイデアを売り込めないのは悔しかっただろうが、SAIC会長はサイバースターを大変気に入り、即座に量産を指示。シザードアを含む全仕様の実現を要求したため、中国のエンジニア陣に難題を突きつける形となった。

サイバースターの成功と、上海を拠点とするデザイン担当副社ヨゼフ・カバン(フォルクスワーゲン・グループ出身、ブガッティ・ヴェイロンの設計で知られる)の着任は、ゴッサム氏率いるデザイン部門にとって明るい兆しとなっている。

「わたし達のプロジェクトの成功が信頼の土台を築いたのです。これは新たな章の始まりだと感じています」とゴッサム氏は語ったのであった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

英国名門ブランド MG再起の裏側の前後関係

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