EV界にはホンダN-ONE e:とスーパーワンが必要だ #JMS2025【日本版編集長コラム#55】

公開 : 2025.11.09 13:25

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、『日本版編集長コラム』です。最近乗ったクルマの話、取材を通じて思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第55回は先日試乗会に参加した『ホンダN-ONE e:』の話です。

シティ・ターボIIの再来

ジャパンモビリティショー(JMS)2025のホンダ・ブースは話題豊富だった。新たなEVシリーズ『0(ゼロ)』の3台はもちろん、ホンダ・ジェットの実物大モックアップにサステナブルロケットなど、陸、海、空、宇宙という、様々なモビリティを展示した。

しかし1973年生まれとなる筆者の世代的には何といっても、『シティ・ターボIIの再来』と評判となった『スーパーワン・プロトタイプ』だ。先日デビューした軽自動車EV『ホンダN-ONE e:』をベースにしたハイパフォーマンスモデルで、2026年から発売予定となっている。

ジャパンモビリティショー2025で発表された、ホンダ・スーパーワン・プロトタイプ。
ジャパンモビリティショー2025で発表された、ホンダ・スーパーワン・プロトタイプ。    山田真人

『ホンダ・シティ』は1981年11月に初代が発売され、1982年9月に『ターボ』、1983年11月に『ターボII』、1984年8月に『カブリオレ』が登場している。2代目は1986年10月から1993年まで販売された。今回、JMSのタイムスリップガレージにも初代シティのラゲッジスペースに積載可能な『モトコンポ』と共に飾られ、しばし見入ってしまった。

ちなみに気になって、初代シティとN-ONE e:のサイズを比較してみた。まず、シティ(Rグレード)が全長3380mm、全幅1570mm、全高1470mm、ホイールベース2520mmで、N-ONE e:が全長3395mm、全幅1475mm、全高1545mm、ホイールベース2220mmと、全長はあまり変わらず、全幅は乗用車であるシティが広め。全高はトールボーイと言われたシティよりも、N-ONE e:のほうが意外にも高かった。

ちなみにシティ・ターボIIは全幅が1625mmとベースから55mm広がっているので、N-ONE e:からスーパーワン・プロトタイプの市販版がどれくらいのサイズで出てくるか注目だ。そして毎度お馴染み前置きが長くなったが、両車の話をし始めたのは、最近N-ONE e:に乗ってみてとてもよかった……からである。

潔い選択に拍手を送りたい

N-ONE e:を簡単におさらいすると、『N-VAN e:』に続くホンダの軽自動車BEV第2弾モデルで、航続距離はWLTCモードで295kmとなる。充電時間は6kWで4時間半、50kWまで対応する急速充電でも約30分と、生活EVとしてはかなり現実的な長さだ。バッテリー加温により、充電時間と航続距離の落ち込みを抑える機能も備える。

ガソリン車のN-ONE ベースではあるが、シンプルになったフロントマスクやインパネ、ラウンドしたテールなどデザインは異なっている。全体的に落ち着いてクリーンな印象で、特にナビゲーションを備えない『G』グレードのインパネは水平基調のシンプルさが際立って、潔い選択に拍手を送りたくなった。

先日開催されたホンダN-ONE e:の試乗会に参加できた。
先日開催されたホンダN-ONE e:の試乗会に参加できた。    平井大介

他にもオプションのAC外部給電器を使用することにより1500Wまで電気が使用できるので、災害時や非常時の電源として期待できたり、公共充電サービス『ホンダ・チャージ』の展開、日本初となる繋ぐだけで充電が始まるプラグアンドチャージなど、同時にインフラ環境を整えているのも注目だ。

このあたりまでは事前取材で得ていた『好印象』で、実は乗るのを楽しみにしていた。

参加した試乗会のプレゼンでは、インバーター、モーター、ギアボックスが一体となるeアクスルについての説明があった。モータートルク自体は162Nmと競合する日産サクラ(プレゼンでは他社EVと記述)の195Nmよりも低いが、最終減速比を掛け合わせた駆動トルクは、サクラの1534Nm(最終減速比8.153)に対しN-ONE e:は1720Nm(同11.0001)となり、『身軽な走り』を実現したという。

走行特性としては、発進時はトルクを抑えてその先で伸びる、リニアで安心感のある減速、ホンダ初採用となるシングルペダルなどをポイントとして挙げている。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。
  • 撮影

    山田真人

    Makoto Yamada

    1973年生まれ。アウトドア雑誌編集部からフリーランスカメラマンに転身。小学5年生の時に鉄道写真を撮りに初めての一人旅に出たのがきっかけで、今だにさすらいの旅をするように。無人島から海外リゾート、子どもからメガヨットと幅広い撮影ジャンルを持つ。好きな被写体は動くものと夕陽。

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