英国名門ブランド MG再起の裏側(前編) 4年で販売台数6倍! 低迷から前代未聞の成長へ

公開 : 2025.11.11 11:25

英国の自動車ブランドであるMGは長い低迷期間を経て、近年急成長を遂げています。コロナ禍などで市場があえぐ中、国内販売620%増という驚異的な飛躍を見せたのです。その成功の裏側には何があるのか。本社を訪ねました。

群を抜く成長率

英国の自動車ブランドであるMGは近年、2019年から2023年までのわずか4年間で英国新車販売が1万3000台から8万1000台へと620%も飛躍した。遠い昔、歴史の記録を遡れば、この驚異的な成長を上回る爆発的成功もあったかもしれない。

しかし、仮にあったとしても誰も覚えていないだろう。MGは今、前例のない記録を樹立したと断言できそうだ。競合他社が同じような好業績を達成することは難しいだろう。英国市場が1年で230万台から160万台へと音を立てて崩壊する中(コロナ禍の初年度に実際に起きた現象)、MGは業績を維持できた。

MGは一時期の低迷から抜け出し、成長軌道に乗っている。
MGは一時期の低迷から抜け出し、成長軌道に乗っている。

このように逆風の中でも驚くべき躍進を遂げたことで、MGは英国の自動車業界の成功史に永く刻まれるだろう。

これが、AUTOCARがMGを2025年の「年間最優秀メーカー(Manufacturer of the Year for 2025)」に選んだ理由の1つだ。他の理由としては、英国主導のデザイン部門の活躍が挙げられる。同部門はロンドン・メリルボーンのマダム・タッソー蝋人形館からほど近い、MGモーターUK本社ビルの最上階に構えるコンパクトなスタジオを拠点としている。

デザイン責任者のカール・ゴッサム氏が率いるこのチームは、大ヒットを飛ばした『MG4 EV』や、最新スポーツカー『サイバースター』など数々の成功作を手掛けている。ただし、その作品の多くは公表できないという。

一体、どうやってここまで成長できたのだろうか?

ブランドが秘めた潜在力

2005年に英国資本から離れた後、MGは長らく低迷を続けた。年間5000台を生産する時期もあったが、目立った成功は収められていない。

しかし、風向きが変わった。欧州本部長ウィリアム・ワン氏は、英国商業責任者のガイ・ピグナキス氏と製品企画責任者デイビッド・アリソン氏(いずれも業界経験豊富な幹部)を招き入れ、志を同じくするチームと共にでMGを成長軌道へと導いたのだ。

英国商業責任者ガイ・ピグナキス氏
英国商業責任者ガイ・ピグナキス氏

ピグナキス氏とアリソン氏は成果を誇りにしているが、その功績はさまざまな要因によるものだとして、自らの手腕については謙虚に言及を避けている。

2人ともMG移籍前から自動車販売業界で経験を積み、かつて「急成長メーカー」と持てはやされたヒョンデの台頭においても重要な役割を果たしていた。当時の英国ディーラーグループの経営者たちと同様、彼らは英国市場に大量流入し始めた中国車に可能性を感じていた。

特に、ピグナキス氏は売却前の「旧MG」で商業責任者を務めていた経験から、すでに同ブランドの潜在力を認知していた。当時担当していたディーラーグループに対し、「新MG」の店舗を開設するよう説得し、販売が急拡大した際にはさらに3店舗の追加出店を支援したのだ。

「ウィリアム・ワン氏がわたし達を訪ねてきたんです」とピグナキス氏は当時を振り返る。「そこで皆でMGの未来について話し合い、フォードヴォグゾール、ステランティス傘下のブランドなど、他のフランチャイズとの連携を決めました。MGに対する高い認知度と愛着を基盤に展開できると確信していました」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

英国名門ブランド MG再起の裏側の前後関係

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