【キーワードは上質さ】新型日産ルークスはパイクカー!デザイナーに訊く、軽自動車の中で埋もれないための手法

公開 : 2025.08.25 11:25

日産は軽自動車のスーパーハイトワゴン、『ルークス』をフルモデルチェンジ。今年の秋に発売します。日産ならではのジャパニーズモダニズムを表現しているというデザインのポイントを、内田俊一が担当デザイナーに聞きました。

ゲームチェンジしなければ

日産は軽自動車のスーパーハイトワゴン、『ルークス』をフルモデルチェンジ。今年の秋に発売する。担当デザイナーに、日産ならではのジャパニーズモダニズムを表現しているというデザインのポイントを聞いた。

日産でルークスのデザインをまとめた入江慎一郎さんはこのルークスのデザインを開発するにあたり、「日産に軽自動車があることを知ってる方が少ない」と感じていたという。

フルモデルチェンジを果たした、新型日産ルークスのデザインスケッチ。
フルモデルチェンジを果たした、新型日産ルークスのデザインスケッチ。    日産自動車

その要因を、「良くも悪くもコンベンショナルな軽であり、個性的な軽自動車の中に埋もれている」と分析。そこで、「ゲームチェンジしなければ、軽自動車ならではのデザインをしなければ、という意気込みでした」と振り返る。

そして、「ラインナップ上は当然日産っぽくしなければいけません」と前置きしたうえで、「軽自動車規格の中でデザインするのは、ボディの厚さもなくサイズも決まっているのでかなり難しい。ただこれをポジティブに捉えたデザインがあるのではないか」と発想したという。

軽自動車の原点は籠

そこでルークスの語源に立ち返った。「まさにルーミーのマックス、マキシマムな広さ感、大きさ感がルークスなんです」。改めて現行車を見直すと、「フロントウインドウやバックウインドウが寝ているので、あえて乗用車ライクになっていた」という。

「まずはそこを、スーパーハイトワゴンならでは、軽自動車ならではのパッケージングに大きく変えようと思いました。そこでパッケージングがデザインの魅力にもなるよう、『かどまる四角』いうテーマでトライしました」

日産グローバルデザイン本部第二プロダクトデザイン部プログラム・デザイン・ダイレクターの入江慎一郎さん(左)と同アドバンスドデザイン部の三宅広華さん(右)。
日産グローバルデザイン本部第二プロダクトデザイン部プログラム・デザイン・ダイレクターの入江慎一郎さん(左)と同アドバンスドデザイン部の三宅広華さん(右)。    内田俊一

さらに入江さんはこのルークスについて、「パイクカーだと思って開発しました」と明かす。その意図は、「今までの日産のラインナップにはない軽自動車として、新しくデビューさせたかったから」だという。

「軽自動車は日本特有のクルマで、その原点は『籠』だと思っています。籠は世界中見てもないですよね。個人的にはそのイメージが強くて、籠みたいなクルマを作りたいなと。ルークスはパイクカー的なデザインを持った、コンセプシャルなクルマに見えると思います」

唐破風をモチーフに

上質さも追及したルークス。入江さんは「今の時代では非常に重要なキーワードのひとつ」だと強調する。

「クルマに限らず日常に使うものにこだわるときは、価格以上のしつらえの良さや、上質なものに目が行きます。軽自動車も規格は軽ではあるものの、軽を超える上質さが備われば絶対にお客様に選んでいただける。そこに特化させてエクステリアもインテリアもこだわり抜きました」

サイドラインは『カラーブレークライン』と呼ばれ、2トーンカラーの塗り分けも想定される。
サイドラインは『カラーブレークライン』と呼ばれ、2トーンカラーの塗り分けも想定される。    日産自動車

そういった視点でルークスを見ると、サイドのキャラクターラインに目がいく。これは『カラーブレークライン』と呼ばれるもので、2トーンカラーの塗り分けも想定されている。

「デザイナーが描いたポンチ絵程度のスケッチ時からあり、それを最後までやり切りました。何かしらキャラクター性を持たせなければいけない。それも、ただのキャラクターラインじゃなくて、最初から色の塗り分けを意識しながらデザインしています。

大前提のルーミーマックスというコンセプトを、いかにエクステリアでも高めることができるか。モノトーンと2トーンの見え方を比較すると、2トーンは縦横の比率が変わって見えるんです。スーパーハイトワゴンなので高いことは是ですが、ワイドさも感じます」

その理由は、キャビンと下屋のバランスが、カラーブレークラインの位置によって変わるからだ。その結果、安定したサイドビューを感させることになり、ユニークさに繋がっている。また、このラインは古来から日本で伝えられてきた門構え様式、『唐破風(からはふ)』をモチーフにデザインされている。

「軽自動車は日本で生まれた自動車です。そこで日本にしかない伝統的なものをボディ全体で取り入れられないかと考えました。ルークスはスライドドアですし、ボディサイドから人を招き入れるおもてなしの心をエクスリアでも表現できるということで、唐破風を取り入れて設えました」

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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