ボルボの安全研究、開発専門家が語る『高齢ドライバー安全運転』の10ポイント!【死傷者ゼロに向けた挑戦】

公開 : 2025.12.09 11:45

「まわりの人の邪魔になりたくない」

例えば、運転中の交差点におけるドライバーの視線の動き(どこを見ているか)を実際に調べてみると、高齢者では首の動き(特に左右に回したり傾けたり)は若年層より劣っており、信号や横断歩道など、動かないものに視線が集中する傾向がある。若年層では対向車など、動く物体に注意を向けているのだが。

これは、視野が狭くなっていることと、「まわりの人の邪魔になりたくない」という意識によるものではと思われる。また、高齢ドライバーには、直線道路でも適切な速度調節に苦労する傾向があったり、交差点では注意力に関連するミスが発生しがちのようだ。

高齢ドライバーには「まわりの人の邪魔になりたくない」という意識がある。
高齢ドライバーには「まわりの人の邪魔になりたくない」という意識がある。    ボルボ・カー・ジャパン

総じて、実際の能力より過小評価して運転を控えてしまったり、また逆に過大評価して安全上の問題を生じたりするといった例が見られる。また、過大評価する人は運転アシスト技術を受け入れにくい傾向があるようだ。

高齢ドライバーが運転するのに必要なことは、
1:自分でコントロールできる速度で運転する。
2:自分の運転技術を客観的に評価し、定期的に練習する。
3:運転支援や衝突回避技術など、利用可能な技術を活用する。
といったことが挙げられるだろう。

安全運転のための10のポイントとは?

日本と同様、スウェーデンにおいても運転免許の自主返納が問題になっているという。住む場所によっては移動手段として運転が必要だが、健康上の問題で運転を諦めようと考える人が増えている。ただ、運転をやめるのは年齢ではなく、個人の状態で判断するべきとブロバーグ氏は語る。

同じ年齢でも人によって能力には差があるから、重要なのは実年齢ではなく、身体や認知など、さまざまな要因の状況で判断すべき。そして運転サポートシステムや移動手段は、すべてに人のニーズに合わせるべきと語る。高齢ドライバーに有益な技術は、年齢に関係なくすべてのドライバーにとって有益なのだから。

ボルボ・カーズは創業当初から安全を重視したクルマ作りを続けている。
ボルボ・カーズは創業当初から安全を重視したクルマ作りを続けている。    ボルボ・カーズ

まとめとして、高齢ドライバーが安全に運転するための10のポイントを紹介しておこう。

1:速度を控えめに

特に市街地ではスピードを落とし、観察・判断・操作の時間に余裕を持つ。

2:焦らず、意図をハッキリ伝える

他車に急かされても無理をしない。ウインカーや車両位置、速度で自分の意図を明確に示す。

3:周囲への注意を高める

加齢で周辺視野や反応が低下することがあるため、交差点や横断歩道など道路が交差する場面では特に集中する

4:運転の練習を続ける

不安があれば、ためらわずインストラクターの運転レッスンを受ける。

5:運転を交代する

カップルや夫婦の場合は、運転を交代で担当し、ふたりとも練習できるようにする。

6:交通量の少ない時間帯や昼間に走る

可能であれば渋滞を避け、見通しの良い日中に運転する。

7:事前にルートを計画する

出発前に行き先と経路を確認する。最新のナビゲーションを活用することも有効だ。

8:安全性能の高いクルマを選ぶ

衝突時の安全性、運転支援(ADAS)、明るいヘッドランプなどを備えたクルマが安心だ。

9:正しい着座とシートベルト

シート維持を調整して楽に操作できるようにする。ベルトのたるみは取り除き、身体にしっかりフィットさせる。

10:駐車操作はサポート機能を活用

360度(バードアイビューなど)カメラやバックカメラを使い、周囲の安全を確認する。

この10のポイントは、高齢ドライバーだけでなく、全てのドライバーにあてはまるものといえるだろう。そして経済的な問題もあるだろうが、歳を重ねても安全な運転を続けて行くには、最新の安全&快適装備を装着したクルマを選ぶことも、今後は重要なポイントになっていくのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    篠原政明

    Masaaki Shinohara

    1958年生まれ。某自動車雑誌出版社をめでたく? 卒業し、フリーランスのライター&エディターに。この業界に永くいるおかげで、現在は消滅したものを含めて、日本に導入されている全ブランドのクルマに乗ってきた……はず。クルマ以外の乗りものもけっこう好きで、飛行機や鉄道、さらには軍事モノにも興味があるらしい。RJC会員。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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