フェラーリではあり得ない受け継がれたアイデンティティ R35GT-R全史を見届けた渡辺敏史が最終型に乗って思うこと(後編)

公開 : 2026.01.02 12:25

開発側の想定を上回るサプライヤーや製造の進化

そして、そんなことを感じているうちに気づくのが、6速DCTの作動音が静かになっていることだ。これについて2017年型以降は変更のアナウンスはないが、納入元(愛知機械工業)の側で作り込みの熟成が進んでいるのではないかと想像している。

実際、GT-Rの場合は開発側の想定を上回るほどの、サプライヤーや製造の進化がクルマを磨き上げてきた側面があるらしく、たとえば製造公差が詰められたことで設計想定値を約8%上回る車体剛性向上が得られているという。

6速DCTの作動音が静かになっているのは、納入元側で作り込みの熟成が進んでいるのではないか。
6速DCTの作動音が静かになっているのは、納入元側で作り込みの熟成が進んでいるのではないか。    日産自動車

登場当初はニュル最速性能をお茶の間に……という足枷もあってか、確かに速さは凄まじいものの、なりふり構わぬがゆえの痛々しさを音振や乗り味に感じることも多々あったGT-Rだが、現行型はそのトゲやバリが尽く丸められた結果、スポーツカー以前にクルマとしてのいいもの感が際立つようになった。

思い通りに走る曲がる停まるのみならず、公道であってもその所作さえ気持ちいい。それは路面変化をものともしないアシを持つTスペックのみならず、最もハードコアなニスモであってもそうだ。これもまた、18年の時がもたらした滋味なのだと思う。

継続は力……ということか、GT-Rは動的に世界の一線級であり続け、そのモデルライフを完遂した。至っている境地を鑑みれば勿体ないと後ろ髪を引かれる気持ちももちろんあるが、冷静に眺めてみれば、それはちょうどいい引き際だったのかもしれない。

GT-Rに求められるのは郷愁ではない

大きな理由はやはり電動化だ。世界のスーパースポーツ群は軒並みHEV化され、数値のみならず速さの質が異次元化しつつある。そういう尺度からいえば、GT-Rはいよいよその速さがアナログ的なものへと変わりつつあるのが現実だ。

もちろんそれでもいい……どころか、個人的にはそれがいいとさえ思うが、今や世界的な名前となったGT-Rに求められるのは郷愁ではないだろう。

果たして次期GT-Rはどんなプロフィールで登場するのか?(写真は2023年のコンセプトカー、ハイパーフォース)
果たして次期GT-Rはどんなプロフィールで登場するのか?(写真は2023年のコンセプトカー、ハイパーフォース)    日産自動車

日産のイヴァン・エスピノーサ社長はGT-Rの生産終了によせたコメントで「現時点で正確な計画は確定していませんがGT-Rは進化し、再び登場するでしょう」と発言している。

そして日産本体からは「日産はGT-Rの名を次世代に向けて再定義することに取り組んでいます。R35から得た知見は、次世代GT-Rの開発に不可欠であり、そのレガシーを進化させながら新たな基準を打ち立てることを目指します」というステートメントも発せられている。

つまり、現時点では次のGT-Rはあるとみて間違いはない。何を用いてどんなプロファイルで……と、その進捗はまったく漏れ伝わってこないが、再び世界を驚かせるその姿をゼロから想像してみるのも一興ではないだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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