フェラーリではあり得ない受け継がれたアイデンティティ R35GT-R全史を見届けた渡辺敏史が最終型に乗って思うこと(後編)
公開 : 2026.01.02 12:25
2025年8月で生産終了となったR35型日産GT-Rは、世界に伍するスーパースポーツとして、日本の誇るべき存在となりました。開発から18年に渡る全史を見届けた渡辺敏史が、最終型に乗って思うこととは。その後編です。
プレミアムミッドシップレイアウトは日産の特許技術
トランスアクスルで後輪に荷重をかけながら、ミッションが後ろに回ったぶん全長の短いV6をキャビン側に押し込んでマスを集中させる。いわゆるプレミアムミッドシップレイアウトは日産の特許技術だが、持てる手駒で何をやるかを考え抜いた上で、プロペラシャフトを前後に往復させるという奇策をも是にしてしまった。これがトラクションの理想解となった理由は、第2世代で積み上げた経験値に他ならない。
このトラクション能力に加えて、速度が増すほど車体を路面にに張り付かせるようなダウンフォースを生み出す空力特性がGT-Rのコーナリングスピードを飛躍的に高めていたことは間違いないだろう。

こうみえて床面流速を高めつつ抵抗値を抑える開口面積など計算されたディテールも織り込まれたデザインは、ポルシェやフェラーリではあり得ない言語で描かれた、一見して日本のGT-Rであることもきちんと伝えてくる。何にも似てない、それこそが第2世代のアイデンティティだ。
GT-Rの最大の転機は2014年に訪れる。開発責任者の交代に伴い、オープンロードの適応力を高める『GT』と、クローズドコースでのパフォーマンスを重視する『R』というふたつのテーマをグレードで分担することになった。
そのRの側を担ったニスモはエンジンや足まわりのみならず、空力特性を司るエクステリアなども全面的に変更され、再びニュルブルクリンクのレコードホルダーに返り咲くほど速さに磨きをかける。
最終仕様2024年型Tスペックに乗る
一方で他のグレードはよりしなやかに動く足まわりの設定となり、乗り味に丸さが加わった。このキャラクターを徹底的に上質な側に引き上げたのが2021年に登場した『Tスペック』だ。当初は究極のトラクションマスターを指すTMスペックを標榜していたが「2文字は収まりが悪い」、「トレードマークみたいだ」という社内の反対意見もあり、Tスペックに落ち着いたという。
開発段階から始まって、その進化の過程を18年にわたってしっかり見届けられた、恐らく自分の仕事のキャリアの中でもそんなスポーツカーに出会うことはないだろう。そんなことを考えながら今回乗ったのは、最終仕様となる2024年型のTスペックだ。

長いモデルライフの中で、途絶えることなく進化を続けてきたとはいえ、乗り込めば操作系やメーター類など端々から旧さも滲む。インフォテインメントシステムが収まるセンターコンソールまわりも全刷新されてから8年の時が経つわけだから、思いがけず齢を嗅ぎ取るのもやむなしというところだろうか。
但し、走り出してしまえば一切の旧さを感じさせないのがGT-Rの凄いところだ。最後の大仕事となったエキゾーストシステムの変更によって消音能力が大きく高められたぶん、精緻に組まれたVR38DETTのメカニカルサウンドが低中回転域でもきちんと立ってくるようになったのはプラス要素だろう。














































































































































































