「燃料計の矢印マーク」は自動車史上最高の発明だ! 1980年代にフォードが考案 英国記者の視点

公開 : 2026.01.13 17:05

ほぼすべてのクルマの燃料計についている「矢印」は、1980年代にフォードのデザイナーが考案したものです。給油口の位置を示す、シンプルで革新的なアイデアと言えるでしょう。AUTOCAR英国記者コラムです。

シンプルで革新的なアイデア EVにも是非

自動車の歴史は絶え間ない進化と革新の連続だ。優れたアイデアと技術を持つ人々が、より安全に、より速く、そしてより良くするために、ひたすら新しい技術を発明してきた。

シートベルト、燃料噴射装置、ABS、エアバッグ、パワーステアリングといった発明、そして給油口の位置を教えてくれる燃料計の小さな矢印もその一例だ。

燃料計の矢印は、フォードのデザイナーであるジム・モイラン氏が考案したことから「モイランの矢」とも呼ばれる。
燃料計の矢印は、フォードのデザイナーであるジム・モイラン氏が考案したことから「モイランの矢」とも呼ばれる。

この小さな矢印は、他の発明品とは少し違う。膨大な研究開発やテストを必要としたわけではない。単なるステッカーだ。しかし、1980年代にフォードのデザイナー、ジム・モイラン氏が考案したこのシンプルな革新により、無数のドライバーの生活が計り知れないほど楽になったことは間違いない。

モイラン氏は雨の日に社用車の給油をしようとしていたが、位置を間違え、給油口と反対側にクルマを停めてしまった。腹を立てた彼は、ある解決策を思いついた。

上司に提案したところ、1989年にフォード・エスコートとマーキュリー・トレーサーにこの矢印が導入された。今では、燃料計に矢印がついていないクルマを見つけるのは難しいだろう。

「ごく普通」で「当たり前」の機能でありながら見過ごされやすく、「分かる人には分かる」という心地よい側面がある。また、初めてその仕組みを知る瞬間には純粋な喜びもある。

筆者の姪が運転免許を取得した直後、彼女のクルマに乗せてもらったことがある。給油のためにガソリンスタンドに近づくと、彼女は給油口がどちら側か分からないと言った。そこで、この「秘密」を教えることができて、筆者はささやかな喜びを感じた。

最近では少し後退しているという懸念

今やどのクルマにもある燃料計の矢印。素晴らしいのは、そのシンプルさだ。クルマ自体は信じられないほど複雑なものになっており、それを支える技術もどんどん進歩している。だが、問題に対する最良の解決策は常に最も単純なものだ。給油口の位置が分からないという問題は、驚くほど単純で安価な発想の転換によって解決された。

しかし、最近では少し後退しているのではないかという懸念がある。充電ポートの位置を示す矢印が付いたEVはごくわずかだからだ。車種によって充電ポートの位置にばらつきがあることを考えれば、必需品と言えるだろう。

EVの充電は、多くのユーザーにとって依然として煩わしさが伴う行為であり、それを可能な限り簡素化するあらゆる工夫が必要だ。だから、筆者はここですべての自動車メーカーに訴えたい。現在開発中の美しいデジタルディスプレイに、わずかなピクセルを使って、充電ポートの位置を示す矢印を表示してほしい。

コストはほとんどかからないが、顧客の生活をほんの少しだけ楽にすることができるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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