クルマは「最速=最高」とは限らない! ベストな選択肢は他にある 英国記者の視点

公開 : 2026.01.08 17:05

最上位モデルが常に最良の選択であるとは限りません。速すぎたり、重すぎたりする仕様は必ずしもベストとは言えず、かえって「下位」モデルの方が魅力的に映る場合もあります。AUTOCAR英国記者コラムです。

「下位」モデルの魅力に注目されたし

BMW M5は長年5シリーズの頂点に位置し、高い性能を誇ってきた。しかし、近年のモデルでは、いわゆる「Qカー(羊の皮を被った狼的なクルマ)」としての地位を完全に失い、公道での扱いも格段に難しくなった。現行モデルは11万1000ポンド(約2300万円)もする。

こうした状況が、「下位」のモデルの魅力を高める結果につながっている。

BMW 550iツーリング(E61)
BMW 550iツーリング(E61)

具体例を挙げよう。筆者は最近、駐車場で、ピカピカの大径アルミホイールを履いたE61世代のBMW 520dと思われる車両を見つけた。しかし、近づいてよく見ると、それはもっと興味深い550iであった。筆者は昔からこのモデルに憧れていた。M5が持つほぼすべての要素を備えながら、欠点は一切ないように見えるからだ。

この世代のM5は凶暴な野獣のようなクルマだった。力強いが繊細な扱いを要求される5.0L V10エンジンと、パドルシフト付きのオートメイテッド・マニュアルを組み合わせている。筆者は2005年のBMWのプレスイベントに参加したのだが、そこではM5が記者団に大人気で、1つの弱点が露呈したことを覚えている。それは、無鉛ガソリンへの異常なまでの渇望だ。

当然ながら、高速テストコースで何度も激しい運転が繰り返され、サポートクルーは290kmごとに給油しなければならなかった(タンク容量は通常の520dと同じ)。

ジェントルなV8エンジンを積んだ550iなら、M5よりもはるかに航続距離が長く、実用性も快適性も高く、いたずらや窃盗、そして厄介なトラブルもずっと少ないだろう。366psは十分すぎるほどの出力だし、それを伝えるシンプルなオートマティックやマニュアルも好ましい。

本当に特別な存在とは何か

筆者にとって、このような例は他にもある。フォルクスワーゲン・ゴルフRより、ゴルフGTIを選ぶだろう。GTIは望むことをすべて叶えてくれる上、燃料費、整備費、保険料、修理費も安い。

かつては、プジョー205 GTiで選ぶべきは1.6Lか1.9Lか、という議論もあった。だが、本当に望ましいのは205 XSだ。高回転型の1.4Lエンジンとクロスレシオのトランスミッションを備えたXSは、速さを保ちながら積極的に操作でき、郊外道路でスリルをたっぷり味わえる。

初代アウディR8
初代アウディR8

同時代の3代目フォードフィエスタXR2iは、ひどいトルクステアを抱えた兄貴分のRSターボよりも、あらゆる面ではるかに優秀だった。近年では、初代アウディR8の後発の重くて荒々しいV10モデルよりも、洗練されたV8を気に入った。そして現行のBMW M340(素晴らしい)は、10年前の伝説的な335dに匹敵するカルト的な地位を確立している。M3は、ひとまず置いておくとして。

そう、筆者にとって最上位モデルは、大抵の場合、下位モデルと比べて高すぎるし、重いし、複雑すぎるし、装備が過剰で、速すぎる。時には不要とすら思えてしまう。もう少し身軽で、控えめなバリエーションを検討したい。

希少性という要素も考慮すべきだ。やや逆説的だが、高価な最上位モデルはその1つ下のモデルよりもはるかに良く売れ、車両自体が長く生き残ることが多い。

現在、英国の道路を走るM5は全世代合わせて約6300台であるのに対し、550iはわずか511台。そのうちE61型ツーリングは22台のみである。つまり、非常に特別な存在と言えるのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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