奇跡のエンジンスポーツカー、アルピーヌA110との惜別【日本版編集長コラム#65】

公開 : 2026.01.18 12:05

しばし見惚れてしまう

今回は年末年始ということで、個人的な買い物にも付き合ってもらったのだが、そこで改めて思ったのがスタイリングのよさと、ボディカラーの絶妙さだった。

周囲は国産ミニバン、SUV、軽自動車ばかりで、その中に並ぶと、造形のよさが際立って見える。比較の相手が……という突っ込みもありつつ、ヘッドライト、ホイール、テールランプなど、ディテールのひとつひとつが美しく、スーパーカーのような派手さもなくジェントル。ボディサイズがコンパクトで控えめなのもいい。

フットレストに左足を置いた瞬間、A110との一体感が高まるように思える。
フットレストに左足を置いた瞬間、A110との一体感が高まるように思える。    平井大介

また、ボディカラーは単なる白ではなくM=メタリックが入っているため、光の当たり方によって見え方が変わってくる。駐車場に戻って夕陽を浴びる姿を見た時は、しばし見惚れてしまったほど。

そもそもアルピーヌA110ケータハムとの協業で話がスタートしたが、破談になったことで単独での開発となり、何とか販売に漕ぎつけたものの、モデルライフを終えようとすると、今度は電動化の波がやってきてしまった。その結果、純粋なエンジンスポーツカーは、一代限りとなってしまったのだ。

EVになる次世代A110は、それはそれで楽しいモデルにはなると思う。個人的には期待感も抱いている。しかし、現行A110とは違う世界のクルマになることは確実だ。

2019年、アルピーヌの聖地ディエップを訪問

初めてアルピーヌのムック編集を担当した2019年に、アルピーヌの聖地、ディエップを訪れたことがある。

北フランスの海岸沿いにある小さな町ではあるが、そこにある工場ではディエップの職人たちが、まるで手作りのように丁寧にA110を作っていた。これでは大量生産は難しいだろうなぁと思うほど、その時間軸はゆったりしたものだった。

純粋なエンジンスポーツカーは、一代限りとなってしまった。
純粋なエンジンスポーツカーは、一代限りとなってしまった。    平井大介

中国勢がその時間軸を早めて、EV開発が信じられない速度になっている昨今、アルピーヌのみならず、多くのメーカーが追従することを求められている。そんな中で現行アルピーヌA110のようなエンジン車は、もはやクラシックと呼べるような存在になってしまった。

既にアナウンスされているように日本でのオーダーは3月末までとなり、ディエップでの生産も今年半ばに終了する。終わって欲しくないとは思うが、もはや時は限られている。

少なくともアルピーヌA110という奇跡のようなスポーツカーと100%同じクルマは、もう二度と誕生しないだろう。それであれば、その歴史を誕生から終焉までリアルタイムで取材し楽しさを享受できたことは、自動車メディアの編集者としてこれ以上ない幸福であった。

アルピーヌA110、ありがとう、そして、さようなら。

開発、生産、販売、輸入など関わった全ての方に拍手と花束を送りたい。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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