4気筒ミドシップ比較(1) ロータス・エミーラ・ターボSE x アルピーヌA110 伝統は強み?重荷?
公開 : 2025.09.19 19:05
405psの4気筒をミドシップするエミーラ・ターボSE ロータス流の処理能力 増した上級感 発進直後から顕になるA110の真価 リア寄りのバランス ピュアスポーツの実力へUK編集部が迫る
背負い方次第で重荷にもなる伝統
アルピーヌA110は、突如誕生した新星といえる。軽く美しく、感動的に運転が楽しく、世界のクルマ好きの心を動かしたといっていい。既に7年も経つなんて、嘘のようだ。
アルミニウムを多用した構造のおかげで、車重はおよそ1100kg。2020年代のエリーゼ、といっても過言ではないだろう。かたやロータスは、エヴォーラの次世代へ注力。従来のミドシップ・アーキテクチャを利用したエミーラを、2022年に生み出した。

伝統は、新ブランドにはない強みになり得る。同時に、背負い方次第では重荷にもなる。古くからの顧客が抱く期待や、避けがたい新規制へ、合致し難い場合は特に。現在のロータスは、その束縛から逃れようとしていると、筆者には映る。
エミーラは、エリーゼから距離を起き、ジュニア・スーパーカーへのステップアップが狙われたようだ。最新のターボSEで、その傾向は一層強まった可能性がある。
メルセデスAMG由来の4気筒から405ps
当初、エミーラには廉価仕様が登場予定だった。メルセデスAMG由来の4気筒エンジンを搭載して。ところが、M139型ユニットはハイテク&パワフル過ぎて、価格は上昇した。同時に365psの最高出力は、訴求力に長けた速さまでは与えなかった。
そこで英国へセルの技術者は、排ガス規制へ対応させつつ、一層のパワーを絞り出した。かくして、ターボSEは405ps。0-100km/h加速を4.0秒でこなす。

実力を探るべく、AUTOCARが相手に選んだのは素のA110。パワフルでタイヤの太い、最新仕様のGTSやウルティムの方がスペック的には近い。だが、本来のコンセプトへ忠実なこちらの方が、特徴へ迫れると判断した。筆者のお気に入りでもある。
BMW M5対アウディRS6のような、直接的な比較ではない。4気筒のミドシップで2シーターという点では共通するが、解釈は異なる。どちらがワインディングで楽しいだろうか。ショッピングにも向いているだろうか。
直後から顕になる真価 リア寄りのバランス
これに先駆けて、筆者はエミーラ・ターボSEと1週間を過ごした。乗降性に優れ、シートは快適で、乗り心地は素晴らしい。8速ATはシーンに合わせて淡々と仕事をこなし、高速道路でもノイズは静か。燃費も、ツーリング中心で13.8km/Lを得られた。
パワーステアリングは、油圧アシスト。重厚感があり、フィードバックは豊か。どのくらいフロントが食らいつけるのか、確信を得やすい。反面、ワダチや不整の影響を受けやすい。ドライバーズカーとして少々惜しい。

A110へは何度も試乗しているが、久しぶりでも、真価は直後から顕になる。電動パワーステアリングのフィーリングは従来的。明確な特徴があるわけではないが、必要な情報は不満なく得られる。レシオは僅かにクイックで、軽快さを味わいやすい。
シャシーの挙動は親しみやすく、連続するカーブが待ち遠しくなる。半世紀前のオリジナルのようにリアエンジンではないが、バランス感はリア寄り。ストレート目掛けたパワーオンでは、古い911のような流暢さに頬が緩む。




























































































































































