上級感を醸すロータス・エミーラ・ターボSE 懐の深いアルピーヌA110 4気筒ミドシップ比較(2)

公開 : 2025.09.19 19:10

405psの4気筒をミドシップするエミーラ・ターボSE ロータス流の処理能力 増した上級感 発進直後から顕になるA110の真価 リア寄りのバランス ピュアスポーツの実力へUK編集部が迫る

調律されたサウンド クイックなAT

アルピーヌA110に載るエンジンは、1.8L 4気筒ターボ。だが、ロータスエミーラ・ターボSEと方向性は異なる。吸気音を鑑賞できるよう、レゾネーターが備わる。キャブレターが載ったツインカムユニットの響きへ寄せるべく、音質も調律されている。

スポーツ・モードを選ぶと、アクセルオフのオーバーランで破裂音。秋の実りを狙う鳥を驚かせる、空砲のように周囲を震わせる。少しやりすぎかもしれないが。

ブルーのアルピーヌA110と、ブラックのロータス・エミーラ・ターボSE
ブルーのアルピーヌA110と、ブラックのロータス・エミーラ・ターボSE    マックス・エドレストン(Max Edleston)

トランスミッションは、2台ともデュアルクラッチ。クラッチペダル付きMTの方が、没入感を深めると筆者は思う。仮に組めても、ターゲット層の大半は選ばないようだが。

エミーラ・ターボSEの8速は、クイックでマナーが良い。とはいえ、A110の7速の方が更にクイック。シフトパドルを弾いた時の反応も、充足感が高い。高速道路では回転数が高めのギア比ながら、普段使いを問題なくこなせ、燃費も悪くない。

2台とも優れる日常との親和性

この比較試乗後に、A110を1週間ほどお借りしたが、日常との親和性はエミーラ・ターボSEへ劣らず優れていた。乗り心地は僅かにしなやかで、落ち着いている。高速巡航時のノイズも、同じくらい抑えられている。

サベルト社製バケットシートは背もたれが一体型でも、クッションには適度な張りがあり、座り心地は抜群。調整域は限られるものの、自分の身体にはピッタリだった。タッチセンサーに頼らない、車載機能の操作系も扱いやすい。

アルピーヌA110(英国仕様)
アルピーヌA110(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ただし実用性は、両車とも高くはないだろう。ボディ後方の荷室は、エミーラが151LでA110は95Lと限定的。前者にはシートの後方に荷物を置ける空間があり、後者にはフロントにも収納があるけれど。

上級感をより醸し出すエミーラ

インテリアの高級感では、エミーラの方が確かに高い。レザーとアルカンターラで満たされ、ボルボ由来のコラムレバーも調和している。タッチモニターのソフトは機能が選りすぐられ、ちゃんとスポーツカーらしくデザインされている。

A110では、化粧パネルのカーボンはフェイクで、ドアの内張りも一部はプラスティックそのまま。タッチモニターの操作感には、社外品のような雰囲気が残る。

ロータス・エミーラ・ターボSE(英国仕様)
ロータス・エミーラ・ターボSE(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

少量生産メーカーのモデルだから、どちらも運転支援システムの標準化に対する規制は緩やか。それでも、アダプティブ・クルーズコントロールが備わり、長距離移動時は便利なことは間違いない。

スポーツカーとして、上級感をより醸し出すのはエミーラ・ターボSEで間違いないだろう。そのぶん、お値段も数万ポンド(数100万円)違う。オプションを幾つか選ぶと、10万ポンド(約1980万円)へ迫ってしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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