コルベット直系のLS1 ヴォグゾール・モナーロ(1) オーストラリア横断に好適なビッグクーペ

公開 : 2025.03.29 17:45

運転を好む層を掴めずにいたヴォグゾールの一手、モナーロ エンジンはコルベット C5と同じLS1 オーストラリアの横断に好適な余裕 真打ちのVXR 6.0は403ps 英編集部が4台で振り返る

運転を好む層を掴めずにいたヴォグゾール

英国ではヴォグゾール(英国オペル)、オーストラリアではホールデンを発信源に、クルマ好きへ衝撃が走ったのは2003年。イメージを塗り替えるコンセプト・スポーツカー、VXライトニングが発表された。

基本的には、グループ内のポンティアックが提供していたロードスター、ソルティスの焼き直しではあった。しかし、ブランドの将来を力強く指し示すモデルだった。この機運から誕生したのが、V8エンジンをフロントに搭載したクーペ、3代目モナーロだ。

ヴォグゾール・モナーロ 5.7 V2 III(2004年/英国仕様)
ヴォグゾール・モナーロ 5.7 V2 III(2004年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

1990年代のオペルとヴォグゾールは、アストラにベクトラ、オメガという堅実なモデル展開で、ファミリーカー市場を有利に立ち回っていた。反面、運転を好む層の気持ちは充分に掴めずにいた。ロータス・カールトン(オメガ)は、10年前の記憶になっていた。

それを問題視した少数の上層部は、ロータスとコラボレーション。エリーゼをベースにしたロードスター、ヴォグゾールVX220(オペル・スピードスター)が生み出されたが、限定的な提案に留まっていた。

ヴォグゾールの親会社だったゼネラルモーターズ(GM)は、エンジンやシャシー技術の世界展開を同時期に推し進めていた。そこで、オーストラリアのホールデンによる1台が、英国市場にも好適だと判断。結果的に、ブランドの若返りにも繋がった。

全長約4.8mの4シーター 2ドアクーペ

2001年に登場した3代目ホールデン・モナーロは、全長4789mmという車格を持つ、南半球生まれの4シーター 2ドアクーペ。GM由来の5.7L V8エンジンが、ボンネットの内側へ押し込まれていた。

英国での仮想ライバルは、メルセデス・ベンツCLK AMGやBMW 6シリーズ。身近な価格設定で、市場に一石を投じることが目指された。

ヴォグゾール・モナーロ 5.7 V2 III(2004年/英国仕様)
ヴォグゾール・モナーロ 5.7 V2 III(2004年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ヴォグゾールの製品計画を率いていた、スチュアート・ハリス氏が振り返る。「GMカナダが、モナーロの輸入を計画していた頃です。ホールデンは、特別な防錆加工施設を準備しており、それを(英国仕様でも)利用できるという幸運が重なりましたね」

「右ハンドルと為替レートも、英国には有利でした」。ただし、オペルの取締役会での許可は必要だった。「燃費が悪いことと、我々が製造したモデルではないという理由で、初めはドイツ側から難色が示されました」

それでも、グレートブリテン島のクルマ好きのため、トップクラスのパフォーマンスを持つ新モデルを提供する必要性や、市場での訴求力には理解が得られた。最終的には、導入が決まった。

年間250台以下を販売できる、少量生産枠で型式認証を取得。オーストラリアでも活躍した、レーシングチームを擁するトム・ウォーキンショー氏の協力を得て、ブレーキとエグゾースト、メーター類が英国規制へ準拠するものへ改良された。

モナーロは、英国のミルブルック自動車試験場で開発時にテストされていたことも有効だった。輸入が決定すると、排気ガスや騒音、衝突テストが追加で実施された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ヴォグゾール・モナーロの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×