ホンダのスポーツコンパクトEV『スーパーワン』ついに市販化! 軽さと重心とディメンジョンを活かしたシャシーファスター誕生【渡辺敏史がプロトタイプを検分】

公開 : 2026.04.10 11:00

N-ONE e:と想像以上に異なるライドフィール

ブレーキはフロントがフィットの14インチシステムをベースにしており、リアはドラムながら油圧シリンダーを大径化して圧着力を高めているという。

プロトタイプの事前取材ということで、試乗はクローズドコースを5周という限られた時間となった。そのため、平時の乗り心地などわかりかねることもあるが、そのライドフィールはN-ONE e:とは想像以上に異なるものだった。

そのライドフィールはN-ONE e:とは想像以上に異なるものだった。
そのライドフィールはN-ONE e:とは想像以上に異なるものだった。    中島仁菜

まず足まわりの剛性やタイヤの縦バネ、そしてユニフォミティからくる転がりの精度感は、スポーティ云々以前のいいもの感をスーパーワンにもたらしている。恐らくは、普段乗りでも多少の凹凸や段差はバネ下が無駄ブレすることなくスキッと減衰するだろう。維持費云々を抜きにすれば、それだけでもスーパーワンの選択理由にはなり得ると思う。

とはいえ、スーパーワンの身上はGTではなくシティラナバウト……と、些か死語の感もあるが、身近な環境でも活き活きと振る舞える走りにこそある。そこで効くのが持ち前の軽量&ワイドトレッドに、BEVならではの低重心を加えた類例のない素養だ。

ホイールベース・トレッド比でいえば攻めることの出来るディメンジョンだろうが、操舵応答性自体は著しくクイックな印象はない。中立からの切り始めにことさらピーキーなところもなく、さりとてダルな感もなく……と、丁度いいくらいのところに収まっている。

舵を深く切り込んだ際の追従性は異質

むしろその曲がり上手なところを感じるのは、ちょっと無理気味なペースでスラロームやタイトコーナーに飛び込んだ時だ。ハイグリップタイヤの加勢もあるが、舵を深く切り込んだ際の追従性はBEVとしては異質。FFながらも、ちょっとやそっとでは重量でアンダー側にもっていかれる気配は現れない。

もちろん最終的には外側にじっとりと膨らんでいくが、その域になると後軸側がゆっくりと滑り出すことで姿勢をイン側に向けようとしてくれる。普通のFF車でこういう味付けをすれば挙動不安定の恐れもあるが、スーパーワンはここでも軽さと重心とディメンジョンを活かしたのだろう。かつてのシティターボはタックインにも悩まされたが、スーパーワンはきっちりシャシーファスターに落ち着いていた。

ステアリングのボタンでブーストモードに入れると70kW=95ps程度まで高まる。
ステアリングのボタンでブーストモードに入れると70kW=95ps程度まで高まる。    中島仁菜

スーパーワンは駆動モーターもN-ONE e:と基本的に同じ、イニシャルの出力も47kWと変わらずだが、ステアリングのボタンでブーストモードに入れると70kW=95ps程度までパワーを高めてくれる。このモードはさすがに体感できるほど力感に差があるギミックとなっていた。

もちろん、いつ何時でも速さを価値とするならば別のクルマという選択肢になるだろう。でも一切合切を1台に託すのではなく、多少の不便を割り切れる大人であれば、上質さと遊び心を両立するミニマルなマイカーとしてこのクルマを愛せるのではないかと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    中島仁菜

    Nina Nakajima

    幅広いジャンルを手がける広告制作会社のカメラマンとして広告やメディアの世界で経験を積み、その後フリーランスとして独立。被写体やジャンルを限定することなく活動し、特にアパレルや自動車関係に対しては、常に自分らしい目線、テイストを心がけて撮影に臨む。近年は企業ウェブサイトの撮影ディレクションにも携わるなど、新しい世界へも挑戦中。そんな、クリエイティブな活動に奔走しながらにして、毎晩の晩酌と、YouTubeでのラッコ鑑賞は活力を維持するために欠かせない。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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