フォード『フィエスタ』復活も? 2029年までに欧州で「ラリーの血を引く」新型5車種を発売へ 市場シェア回復目指す

公開 : 2026.05.22 17:05

他社との提携関係を最大限に活かす

特に注目すべきは、「ラリー由来のデザイン言語」を採用すると表明した点だ。今後はスポーツ志向のセグメントに焦点を当てるものと思われる。

バウムビック氏は次のように語っている。

惜しまれつつも生産終了したフォード・フィエスタ
惜しまれつつも生産終了したフォードフィエスタ

「(ルノーの)プラットフォームの柔軟性により、フォードならではのドライビングエクスペリエンスを注入し、差別化することができます。つまり、単に部品のリストを買っているわけではないのです」

「これは既存部品を寄せ集めて開発するような方式ではありません。世界クラスのプラットフォームとパートナー群の中から戦略的な選択を行い、それによって開発チームが最も得意とすることを実現するためのツールキットを手に入れるのです。そのツールキットを使って、独自の体験を創り出します。完全に異なる車両になることをお約束します」

新型の電動ハッチバックでは、『フィエスタ』の名を復活させる可能性がある。フィエスタがラリーで活躍してきた実績を考えれば、ふさわしいネーミングだろう。

新たなパートナーとの提携も?

また、マルチエネルギープラットフォームを使用し、2029年末までに「ラリー由来のクロスオーバーモデル」と称する2車種も発売する予定だ。これらのモデルがフォード社内で生産されるのか、あるいは他社との提携によるものなのかなど、詳細についてはまだ不明だ。

フォードは、フォルクスワーゲンやルノーとの戦略的提携の重要性を強調し、「欧州市場で競争する上で中核をなす」ものであり、開発期間の短縮やスケールメリットの拡大につながるとしている。

かねてより中国のジーリー(吉利汽車)との提携が噂されており、同社がフォードのスペイン工場に出資する可能性も浮上している。ボルボポールスターを傘下に持つジーリーは、数多くのマルチエネルギープラットフォームを保有している。バウムビック氏は、フォードとジーリーの提携に関するメディア報道についてコメントを控えた。

ラリーの伝統は中国企業との差別化に

フォードは、5車種の新型車すべてが「ラリーの血を引く」としている。「スリルと冒険」と「コントロールと精度」を融合させるものだという。

近年、米国向けラインナップでも同様の戦略を採用している。ブロンコの復活、公道向けのブロンコ・スポーツ、そしてピックアップトラックの派生モデル『ラプター』のヒットを受け、フォードは「オフロード界のポルシェ」となることを目指してきた。

フォード・エスコート・ラリーカー
フォード・エスコート・ラリーカー

欧州でもラリーの経験を強みとして活かしていく方針だ。ある関係者はAUTOCARに対し、自社の伝統的な強みを打ち出して差別化を図ることが、中国の新興企業に対抗する鍵になると語った。

フォードは、『エスコート1800』、『エスコートRSコスワース』、『フォーカスWRC』、『フィエスタWRC』などのマシンで、世界ラリー選手権(WRC)で94勝と4度のマニュファクチャラーズタイトルを獲得している。

ラリーとのつながりは、これまでにも積極的に活用してきた。高性能モデルに与えられる「RS」のバッジは「ラリースポーツ」に由来するほか、電動SUV『マスタング・マッハE』のラリー仕様も販売している。今後はその伝統をさらに強調することになる。

商用車部門がサービス事業へ進出

商用車部門であるフォード・プロは、かねてより欧州事業における主要な利益源であり、今後はソフトウェアベースのサービス開発をさらに推進する方針だ。

今年第1四半期、フォード・プロの有料サブスクリプション数は30%増の87万9000件に達し、将来的には収益の25%をソフトウェアとサービスで賄うことを目標としている。

新型の商用車シリーズ、トランジット・シティ
新型の商用車シリーズ、トランジット・シティ

また、中国企業JMCと共同開発した新型電動バン『トランジット・シティ』をはじめ、製品ラインナップも拡大する。

ピックアップトラックの『レンジャー』の新型としてスーパーデューティーモデルも発売する予定だ。緊急サービスや軍隊、林業や鉱業などの重工業での使用を想定している。最大4.5トンの牽引能力を持ち、積載量は約2.0トン、強化サスペンションとアンダーボディプロテクションを備えている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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