センセーショナル・スーパーカー『フェラーリ296スペチアーレA』(2) 圧倒的なトルク感も、明らかに欠ける燃焼のドラマ

公開 : 2026.06.19 11:50

圧倒的なトルク感に満ち溢れたレスポンス

しかしその控えめな印象は長くは続かなかった。その第一の理由はハイブリッドパワートレーンがもたらす、圧倒的なトルク感に満ち溢れたレスポンスにある。特に低速ギアではその傾向は顕著だ。

トラフィックの流れに隙間が見えたり、強烈な加速が必要になったりした時、その瞬間を逃さないようにと考える必要はほとんどない。8速DCTの驚くべきシフトスピードのおかげで、パワートレーンを一瞬にしてあたかも巻き上げられたバネのような臨戦態勢へと持ち込むことが、いとも簡単にできるのだ。

フェラーリ296スペチアーレA
フェラーリ296スペチアーレA    AUTOCAR

システム全体で880psというというパワーはやはり感動的ですらある。オンロードでこの296スペチアーレAの運動性能を完全に引き出すのは当然のことながら難しい。V型6気筒ツインターボエンジンの最高出力である600psは8000rpmで、またレブリミットは8500rpmの設定だが、このモデルの走りを楽しむためにそこまで高回転域を使う必要はなさそうだ。

エンジンのフィーリングは花火が炸裂するようなというよりも、むしろあらゆる領域でフレキシビリティに富むという印象が強い。もちろんレブリミットに向けてスムーズに回転数は上がっていくが、最高峰のパフォーマンスエンジンのような機械的な野性味が感じられないのは残念だ。

ターボの吸気音や排気音などは確かにドラマチックではあるものの、例えばポルシェ911GT3RSの水平対向6気筒やランボルギーニレヴエルトのV型12気筒のような、背筋がゾクゾクするような燃焼のドラマは、明らかに欠けている。

オンロードでは非常に神経質で反応が鋭い

前で紹介した固定レートを持つダンパーは、オンロードでは非常に神経質で反応が鋭い。このモデルにあまり適していない道路では、たとえそれほど速く走っていなかったとしても、常に注意深く車体の動きを把握しておく必要があるといってよいだろう。

その印象が一変するのは平坦な路面での高速コーナリングだ。そのシャシー性能はまさに驚異的で、ターンインの時にはフロントタイヤは路面をしっかりと捕え、ステアリングを切った瞬間から素早く、そして正確なコーナリングを開始する。

フェラーリ296スペチアーレA
フェラーリ296スペチアーレA    AUTOCAR

ここから先はドライバーが望むとおり、生き生きとしたハンドリングと卓越したコントロール性を発揮してくれる。サーキットでのハンドリングについては断言できないが、今回約500マイルにも及ぶかなり変化にとんだオンロード走行の経験から推測するに、それは驚くほどに素晴らしいだろう。

296スペチアーレAは、道路というものをある意味でかなり明確にふたつのタイプに分けてしまう。ひとつはこのモデルがその秘めたパフォーマンスをフルに発揮し、その驚異的な性能を存分に披露できる道路。そしてもうひとつは身体が揺さぶられ、突き飛ばされ、結局は走りを楽しむ気力を失ってしまう道路だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳 / 編集

    山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王(超王)」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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