レースタイヤ用ゴム、温めるとどうなる? タイヤの達人がブリヂストンで訊いた「深い話」(後編:走る実験室としてのモータースポーツ)

公開 : 2026.08.14 17:10

ドライとウエットで大きく変わる

レースタイヤ用はヒステリシス摩擦が大きく、凝着摩擦が大きいゴムが使われています。

ただし凝着摩擦は、ウエット路面では一気にその性能が低下します。また、温度依存性が高いので、適温にならないとグリップを発揮しない(しにくい)特性があります。

二輪、四輪、ソーラーカーなど、多くのモータースポーツに携わるブリヂストン。
二輪、四輪、ソーラーカーなど、多くのモータースポーツに携わるブリヂストン。    ブリヂストン

レースタイヤ用が、温めたとき突然粘着性が高くなったのはそのためです。

一方、ヒステリシス摩擦は、タイヤが変形し元に戻ろうとする時に発生するエネルギーロスで、変形よりも戻る時のエネルギーのほうが小さくなる特性を持っており、消えたエネルギーが摩擦に変換されるのです。

ドライ路面ではそれほど大きな効果は発揮しませんが、ウエット路面では凝着グリップ力よりも大きな割合でグリップ性能を発揮します。

一般的には、凝着摩擦はドライ路面でより大きくグリップ性能を発揮し、ヒステリシス摩擦はウエット路面でよりグリップ性能を発揮します。

ただ、ヒステリシス摩擦もドライ路面でグリップ効果は発揮します。レース用タイヤでは、少しでもグリップ性能を高めたいので、いずれのグリップ性能も最大限引き出せるコンパウンドが作られるわけです。

レースで集めたデータを市販化に結び付ける

近年では、レースの世界でも再生資源や再生可能資源の活用が求められています。

ワールドソーラーカーチャレンジ用タイヤでは、再生カーボンや再生スチールなど再生資源、再生可能資源使用率65%を実現しています。

黒くて丸いタイヤに込められたテクノロジーを強く感じることになった勉強会でした。
黒くて丸いタイヤに込められたテクノロジーを強く感じることになった勉強会でした。    ブリヂストン

また、スーパー耐久では、タイヤ熱分解オイルから作られるカーボンブラックが使われています。

FIM世界耐久ロードレース(バイク)では、バイオ由来樹脂/オイル、タイヤ熱分解オイル由来のカーボンブラック、再生スチールが採用されています。

こんな具合に、レースのシビアな状況の中で実験を行い、市販化に向けた開発が行われているわけです。

一見すると、黒くて丸いタイヤですから、どれもあまり代わり映えしないように見えるかもしれませんが、じつはこのタイヤの中に、ものすごいテクノロジーが込められているわけです。

今回のセミナーは、そんなタイヤに込められた技術の深さを知ることのできる内容でした。

記事に関わった人々

  • 執筆

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オーバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

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