レンジローバーの2016年モデルの目玉は、ジャガー・ランドローバーのSVO(スペシャル・ビークル・オペレーションズ)が設計・開発したスペシャルなモデルが新たに加わったことだ。510psの5ℓV8スーパチャージド・エンジンを550psにまでチューンし、AMGやらMやらポルシェやらのドイツ勢に対抗しようというのだ。このエンジンを搭載したレンジローバー・スポーツSVRはニュルブルクリンク北コースで8分14秒というSUV最速記録を打ち立てた。価格は16,050,000円。速さに加え豪華さも大幅アップしたレンジローバーSVオートバイオグラフィはロング・ホイールベースのみの設定で、28,580,000円、という高価格である。

さはありながら、これらSVOが仕立てたスペシャル2台には乗る機会がなかった。前述したようにレンジローバーはショート・ホイールベースで最も豪華な仕様のオートバイオグラフィで、18,060,000円もする超高級SUVだけれど、2016年のこれまでのモデルはハンズフリー・パワー・テールゲートが全モデルに標準装備になったとか、新しいボディ色が加わったとか、ごく細かい変更にとどまる。

レンジローバーは去年、白鵬関が乗っているところを筆者は見た。付け人が運転しているようであったけれど、大横綱とレンジローバーという組み合わせがオモシロい。

閑話休題。外気温は0度だけれど、レンジローバーの車内に入ってしまえば、そこは高級感がさりげなく溢れるモダン・ブリティッシュな空間である。ドライブ・モードをAUTOにしておけば、電子制御の4WDシステムがすべて最適に按配してくれる。V8過給機付きエンジンが圧倒的なトルクを粛々と生み出し、努力要らずで加速する。時折、シャーベット状の雪が路面に残っていたりする。そういうところに乗り上げても、スリップするそぶりすら見せない。21inchという巨大なタイヤ&ホイールながら、乗り心地は洗練の極みである。白鵬の土俵さばきと通じるものがあるかもしれない。

それはともかくとして、雪景色の中、レンジローバーほど金持ち気分を味わえるクルマは存在しない。温泉にでも入りながら雪見酒を楽しむ、というような快適かつ贅沢な夢の生活を、束の間味わっている私を自覚する。もちろんオウナーになれば、束の間ではなくて、お茶の間に過ごすことができる。端正かつモダンなデザインのインテリアが目にも心地よい。