ディスカバリーでは雪でつくったコブ状の路面を走った。4WDでよくあるコース設定である。しかしながら、ステアリングを取られた私は、ディスカバリーを亀の子にしてしまった。亀の子では、いかな4×4の伝説的ブランドといえどもいかんともし難い。足がつかなかったらトラクションもナニもない。亀の子にだけは気をつけたい。

ディスカバリーの4WDシステムはセンターデフとリアデフの両方がロックできる。だからディスカバリーは本来、マッド&スノーを得意とする。340psの3ℓV6スーパーチャージド・エンジンはトルキーで、控えめながらイギリス車らしい心地よいエグゾースト・ノートを奏でる。価格は高い方で8,400,000円と、同じエンジンを積むレンジローバー・スポーツとほぼ同等だけれど、実用に徹したランドローバー・ブランドにむしろ好ましさを感じるむきもあるのではあるまいか。気取らないことを気取るスノッブかな。字余り。

かくしてブリティッシュネスを満喫した私は、大町からXE 25tポートフォリオ、6,420,000円で自宅へ帰った。ポートフォリオは贅沢な革内装を持つだけでなく、200psから240psに高められた2ℓのターボチャージド・エンジンをボンネットに隠している。8速ATのおかげもあって、ほとんど3000rpmで仕事をこなしている。だから車内は静謐に保たれる。3000以上回すと、なかなかいい音を奏でる。ターボ・ゾーンに入ると、弾けるようにパワーが出てくる。

気持ちがいいのはステアリングを切った時のロールの仕方だ。肩口からスーッと切り込みつつ、相手の懐に飛び込んでいく感じ。乗り心地は、スノー・タイヤを履いていたせいもあってか、足回りとイマイチ合っていない場面もなきにしもあらずだった。

とはいえ、在日日系イギリス人を目指すのであれば、そういう細かいことは涼しげにやせ我慢すべきである。ハンドリングがあれだけ気持ちいいのだから、それでよしとする。好事家とはそういうものだ。で、やっぱりジャガー・ランドローバーはいいなぁ、と思った1日でした。

(文・今尾直樹　写真・池之平昌信)