いざ走りだしてみると、新車時から5年が経っているが、クリスが所有するボクスターは古さを感じさせない。距離を適度に重ねているからというのもあるだろう。ブレーキ・ディスクの消耗も心配無用だ。

この年式は、すでにエグゾースト・ノートに味つけが加えられているが、音色はナチュラル。信頼性も高い。

ただし、買い方によっては、新車のロードスターよりも余計にお金がかかってしまうこともある。よって、整備記録簿があるかどうかを確認した方がいい。

新車時のボクスターの最高出力は256ps/7200rpmと公表されていたが、今でもその数字には偽りがなさそうだ。乗り心地もよく、コーナーでもフラット。手元にはたっぷりと情報が伝わるし、操舵も正確だ。この世代のPDKは今ほど変速は速くないが、十分に優秀である。

MX-5に比べると、すべての所作が一枚以上うわて。ロールの収まり方も素早い。MX-5は安定感に欠ける時がある。160psというパワーも差を感じざるを得ない。しかし、ロードカーとして考えてみると、やはりMX-5の楽しさはほかのクルマと比べると段違いだ。コンパクトであるし、ギアシフトのキレもある。その点はわれわれも認めている。

しかし、わたしならばボクスターを選ぶだろう。あらためて現オーナーのクリスにも訪ねてみた。「MX-5にじっくり乗ったあとでもボクスターを選びますか?」一瞬、迷った顔をした。けれど彼は答えた。「やっぱりボクスターを選ぶでしょうね」。わたしも賛成である。