マイナーチェンジした三菱アウトランダーPHEV 「さらなるEV化」は本当か?

公開 : 2017.03.10 13:39  更新 : 2021.10.09 23:20

■どんな感じ?

走行機能面で従来モデルと大きく異なるのは「EVプライオリティ・モード(EVモード)」の追加である。EVモードで走らせてみると、全開近くまで踏み込まないとエンジンは稼働しない。

エンジンの始動タイミングはAT車でキックダウン・スイッチを踏み込んだ時に近く、常識的な運転をしている限りエンジンは停止したまま。HVでは味わえない感覚を堪能できるわけだ。音もなくパワフルな電動走行はそれだけ魅力的。

そんな調子で走らせている時にエンジンが始動すると「えっ?」となるのだが、バッテリー蓄電量が減ってHVモードに移行。それじゃつまらない、とバッテリー・チャージモードを選択し蓄電量増を図る……では省燃費に反するのだが、そうしたくなるのも新型なのだ。

ならば、なぜ従来モデルでやらなかったのか?

その答えは単純だ。現行型が発売されてから4年を経た結果、過剰な安全率を見直し、それによって充放電制御を変更。EV航続距離に大きな変化はないが、運転感覚ではレンジ・エクステンダーEVの側面が大きくなった。これは急速充電でも同様であり、急速充電の制限値となる80%蓄電までの時間は約30分から約25分に短縮された。

通常のHVモードに移行するとエンジンと電動モーターの二人三脚となるが、HVではエンジン停止頻度が高く、当然エンジン再始動頻度も高まる。エンジン始動のスムーズさもあって、発電走行への移行時も違和感は少ない。エンジン回転数の変化も抑えられている。HV走行時のドライブ・フィールも従来モデルより洗練されていた。

試乗グレードは最上級仕様としてマイナーチェンジで新設されたSエディション。リア・ゲート周りに構造用接着剤を塗布し車体剛性を強化するとともにビルシュタイン製ダンパーを採用。欧州市場における高速長距離ツーリング適性を向上させたユーロ・チューン仕様でもある。

段差乗り越え等で硬さを感じさせるものの、挙動の収束性のよさや滑らかなロール感など落ち着きと質を感じさせる乗り味。操縦性では操舵初期反応よく挙動を抑えながら容易なライントレース性を示す。

初めての狭いワインディングでも神経質にならずに運転できるのが何より。質感と安心に軸足を置いた改良は好感が持てる。

記事に関わった人々

  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

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