ロードテスト(5) アバルト124スパイダー ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2017.08.27 15:10  更新 : 2018.11.07 15:00

動力性能 ★★★★★★★★☆☆

アバルト124は4本のテールパイプから、やや奇妙で大げさなサウンドを発して存在感を示す。エグゾーストノートは大きめで、深夜の駐車場での出し入れには気を遣うレベル。ちょっとやりすぎな改造車といった感じだ。

アイドリングや低速域では、ちょっとばかり威圧的に過ぎるともいえる。しかし、その激しさは、少なくともドライバーにとっては、来るべきフィアット版やマツダ版よりハードでわかりやすく、ダイレクトなドライビングへの心構えを促すものでもある。

ただ比較的軽量なスポーツカーに、ターボがもたらす差異は否定できない。

アバルトの0-97km/hは6.8秒、マツダの2.0ℓNA仕様の0-100km/hは7.3秒と、ゼロ発進での違いはさほど大きくはない。

しかし、より実走行で重視される追い越し加速では、ターボユニットの力強さがものをいう。4速での48-113km/hは8.3秒で、アウディTT2.0TFSIクーペの8秒フラットに肉薄する。これが自然吸気のトヨタ86だと、およそ12秒かかるのだ。

それゆえ、この124は望むときに間違いなくスピードを得られる。MX-5の5000〜7000rpmは忘れがたいものがあるとはいえ、基本的にエンジン回転を上げることを強いられるクルマだ。

その点、このアバルトならたったの2500rpmから十分な力を発揮し、レスポンスにも優れる。

アバルトのエンジンは過敏で、ボンネットの下の息遣いが明確に感じられ、加速フィールは高出力版でもソフトだったアバルト500とは異なるものだ。

また、高回転ではフィアット版のエンジンよりずっと大きな喜びが感じられ、そのことがより速く走らせて楽しむ上で決定的な違いを生む。アバルトは5500rpmまでシフトアップなしに回したくなるが、フィアットはそれより1000rpmほど下で息切れし始める。

MX-5に対するアドバンテージは、ある程度の条件付きだ。同じようなドライビングならば、アバルトの方が速く、レスポンスもよく感じられる。そして、シフトチェンジのクオリティの素晴らしさやブレーキの強力さは同等だ。

ただし、アバルトの走りはマツダのような、本当に元気なものとはいえない。

サウンドは自然吸気のように甘美なものではなく、ターボの存在は、ギアボックスの正確なシフトレバー操作や、考えずともピタリと合ってくれるエンジンとプロペラシャフトの回転といったものから、得られるはずの快感を鈍らせるのだ。

テストコース

124スパイダーとMX-5のゼロ発進加速は同等だが、アバルトにはサーキットのラップタイムを同程度のマツダよりおそらく数秒単位で削れるグリップとペースがある。

その源泉は、より硬く、ストロークの短いサスペンションによるものだ。それゆえ、124スパイダーはより一層の安定性と強力なグリップを発揮し、路面のパッチへの当たりにもムラがなく、シンプルに速い。

電子制御スタビリティコントロールは、限界域でのドライビングを非常に楽にし、オンにしていればリアがわずかでもラインを外すことはない。

オフにすれば、マツダのそれよりクイックな挙動が出るが、それでも好きに振り回せて、非常に寛容なクルマだ。ただし、バンプに遭えば、トラクションは失われやすい。

T2のようにシャープなコーナーでは、スロットルオンでのバランスはわずかながら失われる。アンダーステアは常にわずかだ。

ローダウンしたスポーツ・サスペンションは、T1の後で、トランスミッションのショックにかぶせて好ましくない衝撃を生み、グリップレベルを低下させる。

発進加速


テストトラック条件:多湿路面/気温6℃
0-402m発進加速:15.2秒(到達速度:147.9km/h)
0-1000m発進加速: 27.9秒(到達速度:187.3km/h)


トヨタGT86(2012)
テストトラック条件:乾燥路面/気温13℃
0-402m発進加速:15.7秒(到達速度:147.3km/h)
0-1000m発進加速:28.4秒(到達速度:187.8km/h)

制動距離


テスト条件:多湿路面/気温6℃
97-0km/h制動時間:2.79秒


メルセデス-AMG C63 セダン(2015)
テスト条件:乾燥路面/気温13℃

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

アバルトの人気画像