北極圏の凍結路「アイスロード」 オイル・ブーム時から一転、絶滅も? AMG GLE43で走ってみた

公開 : 2018.02.03 21:10

いざ、アイスロードを走る

アイスロードを走るには慎重さが必要だ。ぼんやりしている暇などほとんどない。この道はほとんどが直線で、数少ないカーブも緩いものでしかないが、慎重なステアリング操作が求められる。

万一道路を外れそうになった時は、思いっきりカウンターステアをあてながら、わずかにアクセルを踏むしかない。

凍結路の幅は広く、6車線のハイウェイほどもあるのでそのための時間はたっぷりある。雪に覆われた路面はそれほど危険には見えないかも知れないが、たいていその下は分厚い氷の層で覆われている。

北極海沿岸に位置する目的地のトゥクトヤクトゥクは、クルマで辿り着くことのできる地上における最北の町のひとつだ。かつては重要な軍事拠点であり、1970年代初頭のオイルショックを経て、その後はボーフォート海における原油とガス資源探索の戦略上の要地となった。インペリアル・オイルのような巨大な石油企業が、大型の掘削施設や関連するインフラとともに、この地域に繁栄と雇用をもたらしたのだ。

一旦停車してこの先のアイスロードを確認すると、やけに大きな割れ目と突起があるのに気が付いた。それが以前吹雪の中で発生したトラック火災によるものだと分かるのに時間は掛からなかった。

火災によって氷がわずかながら水中に沈みこみ、その反動で「アイス・ウェーブ」と呼ばれる突起が生じるのだ。地元のひとたちは大丈夫だと言ったが、氷が割れてクルマもろとも水中にのみこまれてしまうんじゃないかと言う恐怖が消える事はなかった。

アイスロードを通行するひとびとの安全を確保するため、地元当局は標準仕様のシボレー・ブレイザーが牽引するトレイラーにソナーを搭載して、定期的に氷の厚みを測定している。氷の厚さによって、通行できる車両の重量が規定され、その結果が毎日道路標識に掲示されるのだ。

氷の層の上を100km/h以上ものスピードで何時間も走り続けるというのは変な気分だ。例えブレーキを床まで踏みこんだとしても停止するまでに100m以上も必要になると知りながら追い越しを掛けるのは、何だかおしりの辺りがむず痒くなるような経験だった。

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