フォルクスワーゲンXL1

公開 : 2013.03.07 18:59  更新 : 2017.05.29 18:58

■どんなクルマ?

このカーボンファイバー・ボディでガルウィング・ドアを持つ2シーターの超エコノミー・モデルは、フォルクスワーゲンの10年にわたるエンジニアの努力が結実したクルマだ。ちょうど今世紀に入った時に打ち立てた、1ℓの燃料で100km走るという、フェルディナント・ピエヒのビジョンからそれは始まった。

最初のモデルは2002年のL1というモデルで、それはタンデム・シートのカーボンファイバーのボディを持ち、単気筒8bhpのエンジンを搭載していた。重さは290kg。そしてこの第1世代のL1は、84.3km/ℓの燃費をマークした。

第2世代のL1は2009年に登場した。これは2気筒のディーゼル・エンジンと、電気モーターを組み合わせたハイブリッド・モデルだった。しかし、実際にプロダクション・モデルに移行するに際し、衝突安全性テストをクリア出来ないという問題を抱えた。

その第2世代のL1が発表されて2年後、フォルクスワーゲンは、ついに走行可能な、そして生産可能なプロトタイプ、XL1をデビューさせることになる。

エンジンは2気筒ディーゼル・ターボによるハイブリッド。ドライバーの横にパッセンジャーが座る”まとも”なシート・レイアウトを持ち、スーパーカーのようなカーボンファイバー強化FRP(CFRP)によるモノコック・ボディのモデルだ。クラッシュ・プロテクションとして、フロントとリアに大きなアルミニウム製のクラッシュ・ボックスを持ち、ミドに搭載されるエンジンもアルミニウム製のサブフレームに抱かれるレイアウトをとる。アッセンブリーの重さは全体で230kgだ。そのフォルムは、エアロダイナミクス最優先でデザインされたことは言うまでもないが、アクセスを容易にするために、ガルウイング・ドアを持つのが特徴だ。

サイズは、全長3.88m、全幅1.65m、全高1.15m。それはポロよりも20mm狭く30mm低く、そして100mm短い。しかし、実際にクルマを目の前にするとさらに小さく見える。これはディアドロップの形状にもよるところが大きい。そのCd値は、一般市販車では最高の0.189をマークする。

フロント・サスペンションはダブル・ウィッシュボーン、リアはセミトレーリング・リンク。ブレーキは、軽量なセラミック・ディスクが使用され、ホイールもマグネシム製となる。タイヤはフロントが115/80R15、リアが145/55R16と、モーターサイクルのようにスリムだ。

パッセンジャー・セルの後ろには、2気筒のハイブリッド・ドライブトレーンが搭載される。一般的な1.6ℓターボ・ディーゼルを半分にした2気筒800ccでそのパワーは50bhp。これに27bhpを発揮するモーターが組みわせられる。これに7速のDSGという組み合わせだ。バッテリーは5.5kWで、助手席の前方に搭載される。

XL1は、ディーゼルのみ、モーターのみ、そして両方を使うブースト・モードで動くことが可能。ブースト・モードでのトータル・パワーは、68.3bhp、14.2kg-mだ。最高速度は160km/hで、0-100km/h加速は12.7秒だという。

■どんな感じ?

XL1に乗り込むにはちょっとしたコツが必要だ。窓枠が大きくシートは低いからだ。しかし、一旦、座ってしまえば快適な空間だ。リア・ウインドーがないが、フロントの視界はパノラミックだ。ドアには、一対のiPhoneのようなスクリーンのバックモニターを持つ。XL1は、市販車で最初にリア・ビュー・カメラを持つモデルなのだ。

インテリアは、良い味付けで、高いクオリティのフィニッシュがされている。また、ハーフサイズのトランクもリアに備える。2つ3つの旅行カバンなら収められるサイズが確保されている。

キーを捻ってシフト・レバーをDに入れる。すると、クルマはバッテリー・パワーで静かに走りだす。通常のクルマとは異なる感覚がカーボンファイバー・モノコックを通して伝わってくる。静かなサウンドがキャビンに侵入してくるのだ。

スロットルを踏み込むとディーゼル・エンジンに火が入り、単調なエンジン・サウンドが伝わってくる。真っ直ぐな道では、交通の流れに乗るのには充分なパワーで、XL1は安定した走行を見せる。それは驚くほど快適で静かだ。

ステアリングも精密で素早い。そして、エンジンとモーターはシームレスに稼働する。エンジンは、バッテリーによるモーターの駆動力が足りなくなると、すぐにスピンアップするのだ。

街中では若干ハッピーでないこともある。というのも、乗り心地が少し不安定で、ステアリングも重くなるということ。低速ではステアリングの重さがかなりになるので、ミニ・ロータリーなどで激しくドライビングをするのは難しい。また、ブレーキもセラミック製ということもあり、少々うるさい気がした。

しかし、高速道路におけるXL1は素晴らしいのひとこと。今回、高速走行のテストルートは豪雨に見舞われたが、そんなことも関係なくXL1は安定して走る。静かにトラックを追い越すことも難なくやってのける。100km/h巡行で、XL1のエンジンはちょうと8bhpを発揮する。エンジン回転は著しく低い。

今回の山岳ルートを含むテスト・ルートでは、最高66.6km/ℓの燃費をマークしたドライバーがいた。このことからも、高速道路では70.0km/ℓをゆうにマークできることがわかる。

全体として、XL1をドライブすることは、非常に変わった経験ではある。しかし、そのエンジニアリングは、どんなドライバーにとっても満足できるものだろう。

■「買い」か?

第一に価格に関する情報がまだない。XL1は、カルマンによって250台が生産される予定だが、その請求額がいくらになるかはフォルクスワーゲンの社長でもまだわからないとジュネーブ・モーターショーで語っていた。しかし、どちらにしても、フォルクスワーゲンが損失を被ることは確かだろう。また、当初は50台のXL1が限定生産される予定だが、英国にどれだけの数が割り当てられるかもわからない。

しかし、軽量素材と、電気モーターのアシストによるハイブリッド、劇的にエアロダイナミクスに優れたボディなど、革新的なそのテクノロジーは確かに将来のファミリーカーを示唆したものだ。超アーリー・アダプターとして登場したXL1は称賛されるべきクルマである。

(ヒルトン・ホロウェイ)

フォルクスワーゲンXL1

価格 NA
最高速度 160km/h
0-100km/h加速 12.7秒
燃費 -110km/ℓ
CO2排出量 21g/km
乾燥重量 795kg
エンジン 直列2気筒800ccターボ・ディーゼル+モーター
最高出力 68.3bhp
最大トルク 14.2kg-m
ギアボックス 7速デュアル・クラッチ

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