ロードテスト マクラーレン600LTスパイダー ★★★★★★★★★☆

公開 : 2019.06.02 11:10  更新 : 2019.06.10 17:28

意匠と技術 ★★★★★★★★★★

ロングテールとはいうものの、ベースとなった570Sと比べ、全長は7.4cm伸びたに過ぎない。もっとも、ボディサイズの拡大は主たる目的ではない。ネーミングの由来であるF1 GTRロングテールと同じく、重要なのはサーキット性能の強化なのだ。

大幅に改善されたエアロダイナミクスは、その目的を達成する上で中心的な役割を果たす。ウォーキングのエンジニアたちは、可能な限り車体を地面に張り付かせるべく、ボディワークに数多くの変更を施した。たとえば幅広く、27mm延長されたアグレッシブなフロントスプリッターや、乱気流を整流するサイドシル、巨大なバリカンみたいなリアディフューザー、そしてこれまた大きな固定式リヤウイングなどがそれだ。

これらが相まって、600LTスパイダーはクーペと同じく、250km/hで100kgのダウンフォースを発生する。パッケージングの障害となることが避けがたい、開閉式ルーフを導入したにも関わらずだ。

このルーフは重量面でも不利を招くが、それもわずかなもの。マクラーレンご自慢のモノセルⅡカーボンモノコックがもたらす、信じがたいほどのボディ剛性のほうが大きな意味を持つ。補強ブレースなどを追加することなく、クーペと同様の軽量化を施すことができるのだから。その結果、600LTスパイダーは、ベース車である570Sスパイダーより100kg近く軽くなった。それなりにオプションも装備した状態のテスト車で、実測値は1465kgに過ぎなかったのだ。

3.8ℓV8ツインターボの最高出力は600psで、570Sの30ps増し。トルクは63.2kg-mで、これを3500〜6500rpmで発生する。短く軽いステンレスの上方排気システムが、この性能の上乗せ分をエンジンから引き出すのに大きく貢献しており、モータースポーツ由来のフラットプレーンクランクは、エンジン搭載位置を下げ、レースカーのような低い重心高を実現する。7速DCTを介して後輪へ送られた駆動力は、超ハイグリップなPゼロ・トロフェオRによって路面へ伝えられる。

サスペンションは、720Sとコンポーネンツを共有するアルミの軽量なダブルウィッシュボーンで、コイルスプリングとアダプティブダンパーを備える。スタビライザーは前後とも固められ、レスポンスとスタビリティの向上が図られた。フロントのトレッドは、ベース車から10mm広げられている。

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