ポルシェ/アストン/ジャガー チーフエンジニア鼎談 スポーツカーの未来は安泰

公開 : 2019.07.20 11:50

パワー競争の行方 最高のドライバーズカー

――パワー競争はいつまで続く? 現代のドライバーにより少ないパワーで納得させることは可能?

ベッカー:どうでしょうか。今後10年でスポーツカーのハイブリッド化はさらに進むでしょう。そして、電動化は重量増を招くことから、より多くのパワーに頼らざるを得ないのです。この状況がどこまで続くのかは分かりません。

プロイニンガー:もう直ぐ、パワーを増やしても、それほどの効果が得られない状況がやって来ると思います。個人的には200馬力では、真夜中に起き出してドライブを楽しむにはパワーが少ないと感じるでしょう。刺激を味わうにはそれなりのスピードが必要であり、重量が1400~1500kgのモデルであれば、本当にドライビングを楽しむには、最低でも300から350馬力が求められます。オーバーパワーに感じるかどうか、ギリギリのところを上手く見つけ出すことが出来れば、決して飽きることのないドライビングを楽しめるでしょう。エンジニアとしては、刺激を求めるあまり、グリップの限界を超えるような走りをするというのは、あまり認めたくはない考え方です。さらなる刺激をもたらすための、別の方法を常に見つけ出そうとしています。

ベッカー:さらに、クラシックモデルを運転してみても、魅了されることはほとんどありません。つねに、「ブレーキのフィールが最高とは言えない。ステアリングもいまひとつであり、グリップも足りない。リアからのフィードバックも欠けている」などと考えてしまいます。ステアリングを握っている間中、気に入らない点にばかりが頭に浮かんでくるのです。新しいモデルのような進歩を感じることができないからです。われわれの役目は前進することにあります。

――それぞれのブランド以外で、いま世界最高のドライバーズカーを創り出しているメーカーはどこ?

ベッカー:いまフェラーリ458を所有しています。溢れるほどの刺激と、驚くようなハンドリングレスポンスを味わわせてくれます。911も好きなモデルです。先代GT3 RSを運転したときには、かつて手掛けたロータスエキシージを思い出しました。多くの刺激と魅力的なフィーリングとともに、驚くほどの速さを見せてくれました。

クロス:メカニカルなフィールを備えたモデルが好みですが、そうしたモデルは公道で十分に楽しむことのできる、ほどほどのパワーを備えています。ポルシェケイマンは素晴らしいモデルだと思います。かつてルノーメガーヌR26Rのステアリングを握ったことがありますが、一度タイヤが温まれば、非常に楽しかったことを覚えています。一方、あまりにもパワフル過ぎる場合、それほど運転を楽しむことができなかったこともあります。コーナーへのアプローチでは、単に大きく減速を強いられるだけのようなモデルです。かつて、ロータス・サンビームとシェベットHSを所有していたこともあります。

プロイニンガー:112psを発揮するフォルクスワーゲン・シロッコGTI 1600が初めての愛車でした。車重960kgで非常に気に入っていました。一方、カマロやチャレンジャーといったアメリカンマッスルカーも好みです。こうしたモデルには本物のキャラクターが備わっています。中味さえ本物であれば、安物の樹脂製ボディなど気になりません。

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