新旧ベントレー比較試乗 EXP2 vs ベンテイガ 伝統はいまも変わらず 

公開 : 2019.08.04 11:50

卓越のエンジニアリング 究極のパワートレイン

当時ベントレーにとって重要だったことは、いまベンテイガがドライバーに見せてくれるものだ。それは、もちろんパワーとスピードに違いないが、ベントレーをライバルたちのなかで傑出した存在にしているのは、その卓越したエンジニアリングセンスであり、少なくとも、つねにベントレーはそう評価されてきた。

ベンテイガのルックスや名前、もしかしたらこのクルマが属するセグメント自体が好きでなかったとしても、このクルマが見事なエンジニアリングによって生み出されたということだけは、疑う訳にはいかないだろう。

ボディサイズだけでなく、骨格も力強さを感じさせ、なんの苦もなく前へと進む様子は、まさにベントレーそのものだ。

1931年製8リットルでは、非常に操作の難しいギアボックスを巧みに扱うドライバーが、静止状態から歩くよりも少し速い程度のスピードで、直ぐにトップ(4速ギアだ)にまで入れても問題ないことを示してくれたが、決して正確とは言えないイエーガー製時計式回転計の針がゼロ近くまで落ち込んでも、このクルマは、まるでそのために生まれたと言わんばかりに、滑らかに前へと進んで行った。


ベンテイガ・スピードも現代のやり方で同じような能力を見せつける。偉大なるベントレーのエンジニア、ウルリッヒ・アイヒホルンと、ベントレーにおける究極のパワートレインとは、ギアボックスを不要とするほどのトルクに溢れたものだと話したことを覚えているが、皮肉にも、完全な電動のベントレーが発売されれば、まさにその究極のパワートレインが実現することになる。だが、それが当時、われわれふたりが心に描いていたものかどうか、わたしには定かではない。

ベントレーがSUVを作ることの是非についても、わたしにはよく分からない。だが、もし、SUVという概念が1920年代にすでに存在していたなら、ベントレーがベンテイガのようなモデルを創り出していたことには、全財産を掛けても構わない。

いまでは完全に失われてしまったものの、かつて一世を風靡したコーチビルドによって、当時ベントレーのモデルを購入しても、実際に手に入るのはシャシーだけだったにもかかわらず、バンデン・プラやフリートストン&ウェブ、H・J・ミュリナー、スラップ&マバリー、その他数多くのコーチビルダーたちが、特注のボディを誂えてくれていた。

ベントレーのモデルにはレーシングカーから王室向けリムジンなどが存在していたが、少なくともそのなかの1台は霊柩車だった。

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