【今あらためて試乗】BMW Z1 量産車にない高い密度と開放感

公開 : 2019.12.08 05:50  更新 : 2021.10.11 14:52

きのう、たいへん多くの注目をあつめたBMW Z1の記事。こちらではZ1に試乗します。試乗したオーナーカーはエンジンを換装しています。筆者(吉田拓生)は、それを正解だったといいます。お楽しみください。

エンジンを換装する理由

text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

総生産台数は8000台だが、わが国に輸入されたBMW Z1の数は100台あるのだろうか。今回出会ったZ1は1989年式なので、並行輸入された個体ということになる。

その希少性やパーツ供給の難しさを考えればガレージにしまい込んでしまうオーナーも少なくないと思われる。

この時代に既にリトラクタブルでないヘッドランプにも先見性が感じられる。キドニーグリルはバンパーと同化しており控えめな印象。微かなブリスターフェンダーがグラマラスなシェイプを作り出す。
この時代に既にリトラクタブルでないヘッドランプにも先見性が感じられる。キドニーグリルはバンパーと同化しており控えめな印象。微かなブリスターフェンダーがグラマラスなシェイプを作り出す。

しかし今回の撮影車のオーナーである張建中さんのアプローチは違っている。

外観ではホイールがインチアップされていることが特徴になっているが、中身はそれ以上のモディファイが込められている。

なんと2.5Lの直6からアルピナB3 3.3(E46)用の3.3Lの直6に換装されているのである。自然吸気のまま、最高出力は170psから一気に285psあたりまで引き上げられていることになる。

BMW Z1を一度でもドライブしたことがあれば、今回の個体がエンジンを換装している事実に納得がいくはず。

というのも、徹底的に作りこまれたZ1のシャシーは潜在能力がとても高く、これに対して325iから流用されたエンジンのパワーは心許ない。

このため90年代には、数多くのチューナーがZ1のためのチューンを用意していたほどなのである。

ドアを開けた状態こそ「正装」

鍵穴を親指で強く押し込むと、バスッという大き目の音ともにドアが開く。開くというよりガラスはドアの中に、ドアは分厚いサイドシルの中に一気に吸い込まれる感じ。

そのサイドシルを跨ぐために高く脚を上げ、洞窟のように暗いフットボックスの中に差し入れるわけだが、Z1より乗り降りが難しいクルマは珍しいかもしれない。

3シリーズのコンポーネンツを散りばめてはいるが、専用設計のインテリア。Z1専用の端正なステアリングは人気が高い。スペースがないためエアコンは装備していなかった。
3シリーズのコンポーネンツを散りばめてはいるが、専用設計のインテリア。Z1専用の端正なステアリングは人気が高い。スペースがないためエアコンは装備していなかった。

幌が掛けられていればその難易度はさらに上がるはずだ。

Z1のインテリアは80年代のE30 3シリーズの空気感で満たされている。それでもサイドシルとセンタートンネルの隙間にピタリと収まったバケットシートにハマってみると「自分は今特別なクルマに乗っている!」という興奮が襲ってくる。

特に降ろされたままのドアと、そこから見える道端の雑草が、まるでケーターハムにでも乗っているような解放感をもたらしてくれる。

そう、Z1はドアを開けたまま走ることが正装なのだ。それはまるで戦前や戦後すぐの、ドアを外すことができたオープンカーのように。

さっそく走り出してみる。第一印象はかつてドライブしたときと同じ。表現が昭和の子供っぽくて恐縮なのだが「これは超合金だ!」と今回も思ってしまった。

記事に関わった人々

  • 吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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