【2019年もっとも運転の楽しいクルマを決定(6)】ドライビング・ファンを超えた今年のベスト ドライバーズカー選手権2019(6)

公開 : 2020.01.04 18:50  更新 : 2021.03.05 18:45

「爽快」「高揚」「夢中」「理屈抜き」

2019年のBBDCに選ばれたのは、ずばり、アリエル・アトム4だ。

今年で30周年を迎える英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権。少しお祝い気分もあるのだが、変化にも気付かされた。実はアリエル・アトムのような超軽量2シーター・スポーツカーは、圧倒的に有利という理由で、意図的にノミネート対象から除外されていた時代もあったのだ。

アリエル・アトム4
アリエル・アトム4

そんなルールは消え、ケーターハムやアリエル、超軽量板のロータスなどがBBDCにノミネートしてきた。「きっと勝つに違いない」という当初の読みとは裏腹に、上位に食い込むことはあっても、その年のベストに選ばれたことは今までなかった。

ところが2019年のBBDCに選ばれたのは、アリエル・アトム4。ほかのクルマに足りていないものを、最新のアトムは備えていた。極めて秀逸で、日常的な利便性でも遥かに上のマクラーレン600LTスパイダーを2位に抑えた。英国生まれのスポーツカーに、審査員全員が驚かされた。

「爽快」「高揚」「夢中」「理屈抜き」「生々しい」 熟考した上で述べられる端的な単語に、クルマの素晴らしさのすべてが現れている。サーキットでの得点は、1人最大25点中で全員が22点以上を配点。全員が総合得点でも3位以上に入れている。

アトムは熱狂的に楽しい。生身で立ち向かう、レスリング的な要素がある。常に強い一体感を伴い、扱いやすいナイフのような鋭さも持っている。そのため、更に攻め込むのではなく、一歩引いて楽しむのが良いと表現した審査員がいた。

「グリップ力の限界領域へ迫っても、不安感はまったくありません。少しの集中力を保って、全身で操縦することで、その領域を楽しみ続けることができます。腕の立つドライバーのように、心から楽しめます。信じられない次元で。ドライビング・ファンを超えています」 と。

彼は滅多に興奮することはないが、アリエル・アトム4は例外だったのだ。

番外編:アングルシー・サーキットでのタイム

BBDCの選考で、サーキットのラップタイムは点数に影響を及ぼさないものの、クルマの印象を確かめる数字としては役に立つ。自分の運転に疑問を抱かせるきっかけにもなる。

例えば2秒近い差をつけてトップタイプをはじき出したのはダラーラ・ストラダーレだったが、4カ所設定したチェックポイントでの計測タイムは、3カ所で最速というわけではなかった。

2019年英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権
2019年英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権

ダラーラは間違いなく速かったが、ブレーキペダルの柔らかいフィーリングが影響したのだろう。コーナーへの侵入速度が、やや控え目になってしまった。運転に慣れるまでに時間を要した数少ないクルマの1台だったが、走るほどにタイムは縮まっていった。

しかしBBDCの場合、1台1台にかけるラップタイム計測の時間は均等。公平さを期するためだ。アリエル・アトムはチェックポイントでのタイムも良好で、自信を持ってコーナーへ進入できたことを裏付けている。

ポルシェ718ケイマンとルノーメガーヌRSはメカニカルグリップの高さが顕著。サーキットのタイトコーナーで特に感じ取ることができた。調整代もそれなりに大きく、審査員が高く評価している部分でもある。

トヨタスープラは、ピールコーナーと呼ばれる中速コーナーでポルシェ911メルセデスAMGよりも高速に走れている点が興味深い。シャシーバランスと横方向のグリップ力の、良好なバランスによって得られているのだろう。

マツダMX-5(ロードスター) はタイトなバスストップ・コーナーで、トヨタ・スープラとメルセデスAMGよりもコーナリングスピードを披露。ポルシェ911に迫るコーナリングだった。

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