【光るタイヤに24金レリーフ】リンカーン・ベース 究極のカスタムカー 前編

公開 : 2020.04.18 07:20  更新 : 2021.03.05 21:27

好評を受けてカスタマイズは進化

インテリアは白のレザー張りで、シートは金色のブロケード生地で覆われた。深いカーブを描くリアシートの中央には冷蔵庫付きのカクテル・キャビネットを配置。フロアにはホワイト・ミンクのカーペットが敷かれた。

テールフィンの下部分は24金で飾られ、ゴールデン・サハラの名前の由来になっている。それ以外の部分も、金色にメッキ加工が施された。

ゴールデン・サハラII(1954年)
ゴールデン・サハラII(1954年)

完成したクルマは、これまでの地球上には存在しないような風貌を獲得。1954年のロサンゼルスで発表されると、大きな話題を巻き起こした。ターンテーブルに上がったゴールデン・サハラは、マリリン・モンローに負けない群衆を集めた。

制作に要した費用は、当時で2万5000ドル(270万円)以上。新車のジャガーXKSSを、3台は買える金額だ。

ジム・ストリートは費用を回収するため、アメリカを横断するプロモーション・ツアーへと出発する。ディーラーでクルマを展示すると、多くの人を集めた。1955年5月には、モーター・トレンド誌の表紙も飾っている。

ツアーの好評を受け、ジム・ストリートはゴールデン・サハラへ、一層のカスタマイズを施すことにした。オハイオ州デイトンの企業の手を借りて、さらに常識はずれのクルマを目指した。

ボディ側面にはゴールドの装飾を追加。プレキシガラス製のTトップはV字型のロールバーを備えた、エレガントなオープンドーム形状へと改められた。テールフィンは片側2枚に増やされ、ユニークなV字型のテールレンズが断面に添えられた。

白黒テレビにジョイスティック

ボディ塗装の美しさは圧巻。魚のウロコを細かく砕いたものをフレークとして塗料に混ぜ、煌めくようなパール・エフェクトを生んだ。ジム・ストリートは「本当の真珠のような輝き」 だと表現している。

ジム・ストリートのエレクトロニクスに対する情熱が、クルマにも投入されていた。初代のゴールデン・サハラも充分に先進的で、ダッシュボードには白黒テレビが備えられていたほど。まだリビングに白黒テレビがあること自体、贅沢だった時代だ。

ゴールデン・サハラII(1954年)
ゴールデン・サハラII(1954年)

ゴールデン・サハラIIは、さらに驚くような未来が仕込まれていた。ステアリングホイールは、バットモービルのようなバー状のもの。補完するように、タッチパッドでの操舵も可能となっていた。

最も目を引くのは、センターコンソールのジョイスティック。「ユニトロール」と呼ばれ、フレームにマウントされたステアリング機構へとつながり、左右にスティックを倒せばフロントタイヤが向きを変えた。もちろん、前後方向はアクセルとブレーキへとつながっている。

ジム・ストリートは、アメリカ横断ツアーを通じて、グッドイヤーとの提携も生み出した。ゴールデン・サハラIIで最も印象的な部分、内側から光るタイヤだ。

そのオリジナルは、1960年代に安全性を考慮してグッドイヤーが開発していた、ウレタン製のタイヤ。ネオセインという名前が付いていた。2度目の黄金郷を完璧に飾り立てている。

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