【詳細データテスト】アウディS3スポーツバック ニュートラルなハンドリング 過激すぎない速さ 乗り心地と質感は改善の余地あり

公開 : 2020.11.28 11:50  更新 : 2020.12.05 00:40

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

予想したように、新型S3スポーツバックは長距離移動にかなりの実力を発揮する。しかし、同時に困惑も覚えた。

おそらくそれは、このシャシーの新たな仕掛け、モジュラー・ダイナミック・ハンドリング・コントロールを構成する重要なピースが欠けていたからだ。そう、テスト車にはアダプティブダンパーが装着されていなかったのである。

アウディが目指した新型S3の走りは、19インチタイヤとパッシブダンパーの組み合わせでは十分に発揮されないようだが、アダプティブダンパーはなかなかに高額なオプションだ。
アウディが目指した新型S3の走りは、19インチタイヤとパッシブダンパーの組み合わせでは十分に発揮されないようだが、アダプティブダンパーはなかなかに高額なオプションだ。    OLGUN KORDAL

パッシブダンパーでは、乗り心地は硬い。それに気づくのに、時間はかからない。サスペンションは低速でシャープな突起を越えるのに苦労し、走っていると無駄に過敏なフィールだ。

ハードウェアは、難易度の高いB級道路で制限速度までペースを上げると、すばらしいレベルのコントロール性を発揮する。しかしそれと引き換えに、走りのなめらかさや快適性を高める平穏さやロール耐性が失われる。しかも、テスト車は19インチにサイズアップしたホイールを履く仕様。状況をよくするどころか、S3の本分にもあまりマッチしていないようなところがある。

従来モデルに、そしてライバルたちにも勝るのは、鼻先の向きを変える動きだ。ステアリングは、このクラスではほかにないだろうほどコミュニケーション力がある。だけでなく、ラックの重みがある手応えとギアリングが、自信を持って走らせることを可能にする。

そのコンフィデンスを支えるのが、これまでにないほどノーズを外へふくらませないシャシーだ。先代モデルと同じく、後輪へ駆動力を積極的に送るが、コーナーの脱出ではオーバーステア傾向ではなく、揺るぎないニュートラルさをみせる。

そう、このS3のハンドリングをひとことで言い表すなら、ニュートラリティ、すなわち中立性というのがピッタリだ。コーナーの進入では、ブレーキを残したほうがいいと思うことがあまりなく、頑固なほどに選んだラインをなぞって旋回し、最適なギアを選んでいれば、次のストレートへ平然と飛び出していく。

そのうえ、スロットルを臆せず踏み込んでも、シャシーの電子制御をスタンバイさせておけば、このクルマはおどろくほど天候に左右されることなく、その走行性能を遺憾なく発揮してくれるのだ。

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