【お手頃ドライバーズカーを選ぶ】ゴルフGTIxシビック・タイプRxフィエスタSTxGRヤリス BBDC 2020(2)

公開 : 2021.01.03 05:45  更新 : 2021.05.18 16:14

目指したポイントがわかりにくいゴルフGTI

乗り心地は低速で厳しい。エクスムーア国立公園に伸びる道では落ち着かず、ジャンプすることも。ブレーキは制動力を増してあるが、標準より効きは漸進的ではない。

フォードフィエスタSTのパッケージは、相変わらず素晴らしい。編集部のマット・プライヤーは「とても好き。楽しさにあふれているし、能力も高いですね」。と笑顔を漏らす。そのとおりだと思う。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(欧州仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(欧州仕様)

マウンチューン版フィエスタSTを元気な10代の若者に例えるなら、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIは、この中では落ち着きのある大人。歴史の中で、いろいろな経験を積んできたような。

そのかわり、その歴史はフォルクスワーゲンのハードルを上げている。ゴルフGTIの背負うものは軽くない。誕生から50年近い時間を経て、中年の危機的なゆらぎも見え隠れする。

見た目はゴルフGTIらしいく、控えめな主張を備える。パワフルなターボエンジンも、引き締められたやや低いサスペンションも、いつもどおり。フロントグリルには、赤いピンストライプも忘れていない。

ドアを開ければ、タータンチェックのシートも付いている。でも、何かが違う。アンドリュー・フランケルが口を開く。

「フォルクスワーゲンが、8台目ゴルフGTIで何を目指していたのか、イマイチ理解が難しい。ユニークな公式を築き上げてきたのに、変える必要はあったのでしょうか。アップルがサムスンに似せようとしたような、そんな印象を受けます」

ホットハッチとしては優れている

8代目ゴルフGTIには、新参者に負けじと努力している雰囲気がある。同時に、歴代のゴルフGTIが築き上げてきた、オールラウンダーとしての個性を少し見失っているようにも思える。

もちろん、8代目ゴルフGTIも素晴らしく速く、走行性能は高い。優れた操縦性と精度の高さで、エクスムーアのカーブの続く道を、簡単に制覇できる。先代より目的地までの移動速度も、確実に速いだろう。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(欧州仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(欧州仕様)

フロントタイヤのグリップ力は見事だし、トラクションも強大。揺るがないほどタイトな姿勢制御で、路面へ吸い付くように走る。

エンジンも並外れて良い。低回転域からたくましくボディを牽引し、レッドラインめがけて狂気のごとく回転を早める。

一方で、ドライバーとの密な一体感や、角の尖った性能を楽しむ親しみやすさは不足気味。ステアリングホイールは軽すぎ、コミュニケーション力が足りていない。

ESPを無効にはできるものの、ドライバーの自由度が増すこともない。加えて、急な挙動変化に対応できるスキルも求められる。ダンパーは柔らかいコンフォート・モードにしても、強めの振動が完全には消えてくれない。

選択肢としては優れている。しかし、今までの身近さは遠のいてしまったようだ。サイモン・デイビスが端的に話す。「ホットハッチとしては優れています。でも、優れたGTIとはいえないでしょう」

お手頃ドライバーズカー審査の続きは(3)にて。

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