【詳細データテスト】マクラーレン620R レースカー譲りの硬さとうるささ 温度依存性の強いタイヤ それでも手に入れたい

公開 : 2020.12.26 20:25  更新 : 2021.01.06 23:21

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

マクラーレンとしては、サスペンションのスペックに570S GT4と異なる点は多いと説明するだろうが、乗ってみたらその主張を信じる気にはなれないはずだ。

テスト車は、手動調整式ダンパーに施されたセッティングにより、これまでに試乗した中でもっとも硬いフィールのマクラーレン製ロードカーとなっている。

脚は硬く、不整路面ではハンドルを取られるようなところもあるが、ステアリングホイールを押さえつけなくては進路を保てないようなクルマではない。タイヤが温まれば、正確無比なハンドリングが可能になる。
脚は硬く、不整路面ではハンドルを取られるようなところもあるが、ステアリングホイールを押さえつけなくては進路を保てないようなクルマではない。タイヤが温まれば、正確無比なハンドリングが可能になる。    OLGUN KORDAL

あのセナよりハードだというのが、テスター陣のほとんどに共通する見解だ。同時に、目的地まで向かうだけのドライブでさえじつに忘れがたく、印象的なところのあるクルマだった。

公道上での620Rは、きわめてタイトで動じない。コーナリング中はいかなるときもロールしない感覚で、急加速や急ブレーキでの前後荷重移動も非常に少ない。マクラーレンの高い水準に照らしてさえ稀有なほどハイレベルなステアリングがなければ、法定速度内でシャシーの実力を見極めるのが難しいほどだ。

不正路面ではすぐに、620Rのステアリングがアグレッシブで動きすぎると感じるだろう。しかし、そうではない。ギア比は理に適ったもので、直感的だ。グリップレベルや路面状況をこれほどクリアに伝えるクルマは、現在の市販車にはほとんどない。例外を挙げるなら、ロータスエキシージアリエル・アトムくらいだろう。

通常のマクラーレンの操舵系がみせる傾向に比べれば、路面の小さなバンプや反りにも敏感だ。とはいえ、ダラーラ・ストラダーレや公道仕様のラディカルなどとは違い、握る手に力を込めてステアリングホイールをまっすぐに保持していなければならないようなものではない。

公道上でなら、ゆったりとリムに手を置いて、ただただ状況を楽しめる。それゆえ、しょっちゅう走りに行きたくなることが、ほかのハードコアなロードゴーイングレーサーとの大きな違いだ。

ここまで硬く締め上げられたチューンの、レースに由来するクルマだと、一般道を走るような速度域ではハンドリングバランスに不足を感じるものもあるが、620Rならそんなことにはならない。

ハンドリングのアジリティは、タイヤ温度に左右される部分が多少あるものの、それは同類のクルマならどれも似たり寄ったりだ。しかし、トロフェオRに熱が入りさえすれば、驚くほどのグリップと、正確無比な方向転換をみせる。そしてまた、タイヤを温め、それを保つプロセスも、鮮烈で夢中になれるドライビング体験の魅力の一部だ。

関連テーマ

おすすめ記事

 

ロードテストの人気画像